オンライン授業に関する満足度調査から見える課題ポイント

 2020年に急速に普及したオンライン授業について、いくつかのアンケート調査結果が公開されています。あくまで「満足度」の調査や「アンケート」であり、「学習効率」の調査ではない点は十分な注意が必要ですが、ここでいくつかの公開されているアンケート結果を参考に、その結果からわかる課題ポイントと対策についてまとめてみたいと思います。

ブログ管理者のプロフィール
nico@大学職員ITエンジニア
  • システムインテグレーターに10年以上勤務
  • 現在、大学職員(エンジニア職)
  • 教員、学生からオンライン授業の質問や相談を日々受けている
  • ハイブリッド授業、ハイフレックス授業に対応
  • Zoom、Google Meet、Google Classroomなどの利用支援
  • 講師役として学内研修のオンデマンド動画コンテンツ作成
目次

各大学のデータ

立教大学の調査データ

 立教大学が自粛期間中の2020年5月16日〜5月21日に行ったアンケート『オンライン授業についてのアンケート 実施結果概要報告』(N=4,662)によると、授業形態毎で「受けやすさ」が異なっていることがわかります。また、「オンライン授業を受けるうえでの阻害要因」も明らかになってきています

授業の受けやすさ

引用:立教大学『オンライン授業についてのアンケート 実施結果概要報告

 いわゆるオンデマンド型の録画授業は81.5%の学生が「受けやすい」または「どちらかといえば受けやすい」と回答しています。一方、同じ一方向型の授業でもリアルタイム動画配信型になると、67.4%まで下がります。特に目につくのは、オンデマンド型では「受けやすい」と60.4%が回答していたのに対して、リアルタイム動画配信型では32.6%まで低下していることです。このことから授業形態毎にオンライン授業の受けやすさが異なるようです。

 また、リアルタイム動画配信やオンデマンド、双方向などの複合的に組み合わせた授業は最も受けやすさが低いと回答されており、「受けやすい」は10.6%、「どちらかといえば受けやすい」は24.2%で合わせても34.8%と低評価です。1つの科目の授業形態が週によって異なることによる混乱を感じているのかもしれません。

オンライン授業を受けるうえでの阻害要因

引用:立教大学『オンライン授業についてのアンケート 実施結果概要報告

 特に割合が高いのは「身体的な負担」と「授業時間外に行う課題が多いと感じる」という点で、これらは度々ニュース等の報道でも問題視されてきました。アンケートを通じて学生の生の声としてもそれが明らかになったと言えます。

 これらの問題を「問題の主体」(※)毎に分類すると、学生側の抱える問題が多く、それをいかに大学としてサポートできるかが課題であると思われます。
※ 「学生側の問題であり、大学はこれらに無関心で良い」という意図ではありません。

スクロールできます
学生側が問題の主体学生・教員双方教員側が問題の主体
物理的な問題・授業に集中できる環境がない
・所有している機器の機能が不十分
・通信費用
・機器やツールの知識不足
・通信環境が良くない
 (音声や画面が途切れる)
・授業時間外の課題が多い
身体/心理的な問題・困った時に相談できない
・周囲の様子がわからない/孤立感
・目や腰が疲れる
・他の学生が非協力的
 (消音、勝手なチャット)
立教大学『オンライン授業についてのアンケート 実施結果概要報告』の阻害要因を著者の主観で分類

東洋大学の調査データ

 東洋大学の『コロナ禍対応のオンライン講義に関する学生意識調査』は15大学(※)を対象に2020年7月に実施(N=1,426)されています。1大学だけではなく、複数大学で行われている点で非常に参考になります。注意したい点として、対象者は2年生〜4年生である点です。

※ 調査対象大学
⼤阪市⽴⼤学、作新学院⼤学、札幌⼤学、島根県⽴⼤学、淑徳⼤学、椙⼭⼥学園⼤学、⼤東⽂化⼤学、⾼崎経済⼤学、中央⼤学、中京⼤学、東京交通短期⼤学、東洋⼤学、名古屋学院⼤学、兵庫県⽴⼤学、弘前⼤学

 対面授業とオンライン授業をのどちらを希望するかという設問では、対面授業が33%、オンライン授業が40%でオンライン授業を希望する学生が上回っていました。一方、「学習効果」をどのように自覚しているかについては対面・オンラインでほぼ同数です。一方、授業の集中度合はオンラインになって「増えた」が33%、「減った」が39%でした。ここは授業形態によっても異なってくるはずですので、マクロの数字だけで結論づけることはミスリードにつながりそうです。総じて、「オンライン授業への評価は想像していたよりも高かった」ということが分析されています。

関西大学の調査データ

 関西大学の『遠隔授業に関するアンケート(プレスリリース)』(回答数12,655件)は1年次を含んだ調査であり、2年次以降とは違った結果になっている点に注目したいと思います。しかしながら、学部構成を確認すると文系学部(一般的に、実習・実験が少ない学問)からの回答数が多い点を頭においておく必要があります。

 オンライン授業に対する評価は概ね他の調査同様に「通学時間の節約」「自分のペースで勉強できる」といったメリットがあがっており、「倍速で講義映像を見ることができる」というメリットをあげる学生も多数います。また、デメリットも他の調査同様に「課題の量にストレスを感じる」といった点があがっている。

 一方、心理的な問題点として「友達と一緒に学べず孤独感を感じる」と回答した1年次は65.6%であり、2年次(41.5%)・3年次(36.3%)と比べて突出しています。同様に「勉強のペースがつかみにくい」と回答した1年次はは57.2%であり、2年次(41.5%)・3年次(35.2%)と比べて高い水準です。これは、入学前から新型コロナウイルス感染症の流行にともない、キャンパス内で一度も友人づくりの機会がなかったことが大きく影響しており、2年次以降はこれまでの友人とLINEやZoomといったツールを使って連絡を取り合えていることが予想されます。

調査データからわかる課題ポイントと対策

 ここまでのオンライン授業に関するアンケートの結果からいくつかの課題があることがわかります。まとめて見たいと思います。これらの点に沿って、解決のヒントになりそうな記事などご紹介できればと思います。

オンライン授業に関するアンケート結果からわかったこと
  • 学生はすべてのオンライン授業に反対ではなく、質の高いオンデマンド型には満足している。
  • 対面授業、オンライン授業、ハイブリッド授業など授業形態毎で満足度が異なる。
  • オンライン授業(リアルタイム配信)に大学側が不慣れなケースがあり、不満を感じている。
  • 課題やレポートへのフィードバックがない、あるいは少ないことへの不満がある。
  • 1年次は友だちと一緒に学習できない(学習のペースをつかめない)ことにストレスを感じている。

課題① 授業形態毎で満足度は異なる

 オンライン授業やハイブリッド授業はその形態毎で満足度が異なることがわかってきました。特にハイブリッド授業は形態がいくつかにわかれます。まずはそれぞれのメリット・デメリットを把握したうえでの授業計画、授業設計が求められます。

 ハイブリッド授業を行う場合、授業形態にあった機材を用意することで授業の質が向上します。カメラやマイクについて見直す場合は以下の記事が参考になります。

課題② 大学側がオンライン授業の運営・配信に不慣れ

オンライン授業やハイブリッド授業の運営に関するTips・ノウハウはオンラインに散在します。その中でも私は東京大学の「オンライン授業情報交換会」は授業設計やツールに関するグッドプラクティス事例を多数紹介されており、大変勉強になります。これだけの事例とノウハウを無料で学外にも公開されていることに感激しました。

課題③ 課題やレポートへのフィードバックがない

課題④ 1年次は友だちと一緒に学習できないことにストレスを感じている

 大学1年生の友だちづくりを教員がサポートするのは難しいかもしれませんが、授業を通じた学生間のコミュニケーションを促進して、「孤独感」や「学習ペースがつかみにくい」といった問題を解決するのは可能です。例えば、Slidoを使った授業内でのコミュニケーション、そしてLINEオープンチャットを使った科目・授業といった単位の匿名のLINEグループは授業を媒介として問題を解決するコミュニティになりえます。

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