対面授業+オンライン授業=ハイブリッド授業のメリット・デメリット、大学に必要な準備、機材について考えてみた

対面授業・オンライン授業のハイブリッド型授業を比べてみました

 いきなりですが、この記事では「オンライン授業は今後も完全になくなることはなく、対面授業とオンライン授業のハイブリッド型になっていく」という話をします。そして、「ハイブリッド型の授業は具体的にどのような授業スタイルで、どのような機材や準備が必要なのか」というお話をしたいと思います。

 私は現在、ソフトウェアエンジニアとして大学に勤める職員です。日々、オンライン授業やハイブリッド型、ハイフレックス型の授業について教員や学生から質問・相談を受けており、具体的な機材や準備、開催方法について、一定の信頼をしていただけるのではないかと思います。では、解説をはじめていきます。

ブログ管理者のプロフィール
  • システムインテグレーターに10年以上勤務
  • 現在、大学職員(エンジニア職)
  • 教員、学生からオンライン授業の質問や相談を日々受けている
  • ハイブリッド授業、ハイフレックス授業に対応
  • Zoom、Google Meet、Google Classroomなどの利用支援
  • 講師役として学内研修のオンデマンド動画コンテンツ作成
オンラインリアルタイム授業に関する準備はこちら

当記事ではハイブリッド型授業やハイフレックス型授業について紹介します。完全オンライン授業の準備、機材、進め方について知りたい方は、下の記事で紹介していますのでご参照ください。

目次

オンライン授業は完全にはなくならない

 2020年から全国の大学でオンライン授業が実施されましたが、ポストコロナ時代になっても、オンライン授業は残るのではないでしょうか。実際に、2020年6月11日に中教審初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」でも文部科学省から次のとおり考えが示された。

文科省は席上、(中略) 感染症が収束していない「Withコロナ」段階では、教師による対面指導とオンラインとの組み合わせによる新しい教育様式を実践する一方、感染症が収束した「ポストコロナ」段階では、教師が対面指導と家庭や地域社会と連携したオンライン教育を使いこなし、ハイブリッド化したかたちで協働的な学びを展開する姿を描いた。

教育新聞(オンライン)2020年6月11日 「対面指導とオンラインのハイブリッド化 文科省が提示

 今後も完全に対面授業のみにするのではなく、オンライン授業やハイブリッド授業を活用することが望まれており、今、ハイブリッド授業の授業運営ノウハウを蓄積することは教員や大学等の教育機関にとっての投資にもなると捉えることができます。

 では、どのようにして対面授業とオンライン授業のハイブリッド型授業を進めていけばよいのでしょうか。この記事では、ハイブリッド型授業を開催する場合でも、オンライン授業でできることを中心に据えて、そこに対面授業だからこそできることを加えて解説したいと思います。

必ずお読みください
この記事で紹介する授業実施方法は、感染拡大を確実に予防する方法ではありません。この記事の目的は、ソーシャルディスタンスを確保することで教室に入りきれない学生や通学途中での感染を予防したい学生に対して、対面授業をしながらオンライン授業を提供する方法を紹介することにあります。

ハイブリッド授業とは?授業形態を分類

 私の知る限り、ハイブリッド授業を明確に定義したものは文部科学省からは発表されていません。一方、対面授業とオンライン授業を織り交ぜたハイブリッド型の授業運営には次のようなものがあります。

スクロールできます
形態概要注意点・機材
ブレンド型
(Blended)
授業コマ毎の目的や特性に合わせて、15コマのうち「初回は全員対面」「2回目は全員オンライン」というように対面とオンラインを組み合わせるメリット
目的に合わせて対面授業を取り入れることにより、高い学習効果が期待できる。
キャンパス全体で通学する学生数を低減できる。オンライン授業と同じ機材で済む。

デメリット
十分な広さのある教室が準備できなければ、感染リスクの低減にならない。また、教室割当の運用コストが高い。
ハイフレックス型同じ内容の授業を対面・オンラインのどちらでも受講できる。教室でオンライン授業向けにもヘッドセット等を装着しつつ、対面授業を進行する。メリット
対面でもオンラインでも同じ授業を受講できる。

デメリット
授業を進行するまでに機材の準備が必要。
対面とオンラインの両方に注意を払う必要があり、授業進行の負荷が高い。
分散型対面授業を行いつつ、事前にオンラインで受講できる動画コンテンツの両方を準備する
今週は学生Aが対面・学生Bが動画、来週は学生Aが動画・学生Bが対面というようにローテーションする。
メリット
対面授業とオンライン授業(収録済み動画のオンデマンド視聴)を切り分けて授業がデザインできるため、学習効果が期待できる。

デメリット
教員側は対面授業・オンライン授業の両方を準備するため、授業準備の負荷が高い。
対面授業とオンライン授業のハイブリッドにもいろいろな方法がある。一長一短で迷う

ご注意
ブレンド型は、対面授業とフルオンライン授業を開催コマ毎に切り替える方式のため、この記事の中ではその準備や進行方向について触れません。フルオンラインの授業のための Google Classroom の使い方についてまとめた記事がありますので参考にしてください。

ハイフレックス型(一方通行スタイル)

 同じ内容の授業を対面・オンラインのどちらでも受講できるのがフレックス型と呼ばれる授業です。あなたは教室でオンライン授業向けにヘッドセット等を装着しつつ、教室内にいる学生向けに対面授業を進行することになります。

 「議論なし」の一方通行、途中質疑応答を挟んだ授業を実施することを想定すると、次のような機材構成になります。オンライン向けにZoomでつないだ状態で教員はヘッドセットも使います。そのPCを対面向けにプロジェクターに投影して、教室のマイクで話しかけます。(小教室であれば、教室のマイクは省略できます)

 フレックス型(一方通行スタイル)の授業を進行する場合に気をつけたいポイントは以下の3つです。

授業進行上の注意点
・教室の学生とオンラインの学生は直接話せないので、一方から質問があったら教員が復唱して情報共有すべき。
・板書は難しいと考えた方が無難です。Zoom PCのカメラのカバー範囲は狭く、黒板の反射もあるため。
・教員は対面とオンラインの両方に配慮する必要があり、授業進行中の教員への負荷は高い。

 PCやプロジェクター、教室のマイクは従来から使用されていると思いますが、ヘッドセットはこれまでのオンライン授業で使っていたものとは別のヘッドセットが必要かもしれません。ヘッドセットには有線と無線があります。板書はオンラインで受講している学生からは見えないケースがありますが、どうしても板書が必要な場合は無線のヘッドセットがいいでしょう。一方、板書しない場合は、有線のヘッドセットがおすすめです。「接続が切れる」「バッテリーが切れる」という心配がないからです。

無線(Bluetooth)のヘッドセットのおすすめ

有線ヘッドセットのおすすめ

板書したい場合は広角WEBカメラ(150°超広角)がおすすめ

 板書する場合、通常のノートPCの内蔵カメラでは映る範囲が非常に狭く、黒板やホワイトボードのほんの一部しか映せません。なぜなら、内蔵カメラはノートPCの前に座って使われることを前提にしているため広角レンズではないためです。オンラインで受講している学生に黒板の広い範囲を見せたい場合、USB外付け広角カメラを用意するほうが良いでしょう。

 また、外付けカメラはPCに取り付けるのではなく、三脚に立てることで、①安定して、②ベストな位置に置けるため、おすすめです。下記のカメラなら「超広角で、3mケーブルで配置範囲が広く、カメラに三脚穴あり」でおすすめです。

 ハイブリッド授業のカメラ設置に関する記事もありますので、参考までにリンクを貼っときます。

 また、学生間でリアルタイムに音声での議論は難しいのですが、SlidoやLINEオープンチャットなどのチャット機能を使った意見交換であれば、次のような方法もあります。

ハイフレックス型(議論スタイル)

 フレックス型でも少人数であれば、学生同士で議論することも可能です。フレックス型(一方通行スタイル)では、教員が会話のハブになる必要がありましたが、フレックス(議論スタイル)では会議用のスピーカー・マイクを使うことで、次のような機材構成になります。

 スピーカーマイクを選ぶ時に重要なのは、「なるべく大人数」「360度全方位に集音」です。実際に使用するために調達したのは次の製品ですので、参考までにリンクを貼っておきます。

会議用スピーカー・マイクのおすすめ

 8人用を2台接続できて、360度全方位からの集音をカバーする上に、Bluetoothで接続できるため、教室の中央に設置できます。PCからUSBなど有線で接続しようと思うと、長いケーブルが必要になりますが、Bluetooth ならそのストレスからも開放されます。

 さらに高音質なマイク・スピーカーを求める方はヤマハ『YVC-1000』がおすすめです。おすすめの理由、メリット・デメリットはつぎの記事を参考にしてください。

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ハイフレックス型(対面でオンライン受講)

 一部の学生は教室からオンラインで受講し、授業後にコミュニケーションが取れるように次のような構成にすることも可能です。「キャンパスに来る意味があるのか」という疑問もありますが、対面授業終了後の質問や相談が受けやすいメリットがあります。また、授業の進行自体は従来のフルオンライン授業と同じですので、少人数の授業であれば、学生同士が議論することも可能です。

 一方、教室に無線LANが完備されており、電源も確保されているようなBYOD(Bring Your Own Device)が推進されているキャンパス環境である必要があります。

分散型

 受講生を対面とオンラインの2つに分けて、オンライン学生向けには事前に動画コンテンツを準備して、リアルタイム、あるいはオンデマンドで視聴できるようにする方式です。今週は学生Aが対面・学生Bが動画、来週は学生Aが動画・学生Bが対面というようにローテーションします。

 対面授業とオンライン授業では本質的には指導方法が異なるため、それぞれにベストな方法で指導できるため、学習効果が高い点が最大のメリットです。一方、授業の準備には教員側に相当な負荷がかかります。構成のイメージは次のようになりいます。

さいごに

 この記事では、対面授業とオンライン授業をさまざまな形で組み合わせたハイブリッド型授業について、その形式や注意したい点をまとめました。ハイブリッド型授業に関する事例がニュース等になったら、別の記事でも紹介したいと思います。

 ハイブリッド授業におすすめの機材(板書用カメラ、書画カメラ、マイク)については、次の記事が参考になれば幸いです。

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