オンライン授業が「つまらない」「集中できない」「つらい」という学生の声を多くのニュースが報じています。先生だってオンライン授業をやりたくてやってるんじゃないですよね。それだけに2021年春からの対面授業再開は多くの大学生や関係者に歓迎されています。
でも、先に結論を言いますが、「オンライン授業はなくなりません」。むしろ今後は対面授業と同じようにオンライン授業が行われるようになるでしょう。もしも、先生のオンライン授業がつまらないという理由で離脱する学生が増えてきたら、どうでしょう?2020年は「急にオンラインで授業をやるのは難しい」という言い訳が立ちました。しかし、2021年以降は「1年も準備期間があったじゃないか」という批判に変わります。
オンライン授業がつまらないのにはいくつも理由があります。この記事では、オンライン授業について教員から毎日のように相談されたり、ツールの使い方をお伝えしている現役の大学エンジニア職員がオンライン授業がつまらない理由とその改善策について解説します。
オンライン授業の定義
オンライン授業には様々な形式があります。記事の中では、つぎのとおり定義します。
オンデマンド授業…事前に録画した動画をアップロードし、学生は自由なタイミングで受講する形式
リアルタイム授業…オンラインでリアルタイムに授業を配信する形式
ハイブリッド授業…対面授業をしつつ、オンラインにも配信し、相互にやりとりをする形式
- システムインテグレーターに10年以上勤務
- 現在、大学職員(エンジニア職)
- 教員、学生からオンライン授業の質問や相談を日々受けている
- ハイブリッド授業、ハイフレックス授業に対応
- Zoom、Google Meet、Google Classroomなどの利用支援
- 講師役として学内研修のオンデマンド動画コンテンツ作成
オンライン授業がなくならない理由
繰り返しになりますが、今後もオンライン授業はなくなりません。大きく3つの理由があります。①新型コロナウイルスの感染再拡大リスク、②感染リスク・重症化リスクの高い学生の学習機会確保、③学生自身が部分的にオンライン授業も望んでいる という点です。順に説明します。
① 新型コロナウイルス感染の急な再拡大
理由の1つ目として、新型コロナウイルス感染の急な再拡大が懸念されるためです。2021年3月時点の日本においては第3波がようやく落ち着き、春から対面授業を全面的に再開する大学がほとんどですが、第4波が懸念されています。変異ウイルスの懸念もあり、さらにワクチンを摂取しても行動変容がなければ感染は拡大するという報道もあります。そのため、今後も感染状況によってはオンライン授業が再開される可能性があります。
新型コロナウイルスのワクチンの高齢者への接種を8月のお盆までに終えても、感染者数に応じて引き続き飲食店の時短要請などをしなければ、感染力が強いとされる変異株が秋には広がり、感染者数が爆発的に増加する恐れがあることが2日、政府が支援する筑波大の研究で分かった。
産経新聞オンライン(2021.4.2)(https://www.sankei.com/life/news/210402/lif2104020072-n1.html)
② 感染リスク・重症化リスクの高い学生への配慮
2つ目の理由は、感染が抑制できても基礎疾患等により感染リスク・重症化リスクの高い学生に対して、平等に学習の機会を確保するためにオンライン授業やハイブリッド授業(対面授業とオンライン授業を同時並行で行う形式)が求められるためです。
③ 学生もオンライン授業の利便性を実感している
3つ目の理由として、学生自身もオンライン授業を求めるケースがあるためです。2020年秋期から対面授業を再開している大学による対面授業に関するアンケート調査の結果がいくつも出てきています。例えば、関西大学のアンケート『対面授業に関する学生アンケート』(有効回答数 8,556件)の結果によると、対面授業の再開を歓迎するものの、オンデマンド授業やオンライン授業への高い満足度、内容の高い理解が示されています。つまり、学生は対面授業の必要性を感じつつ、オンライン授業にも利便性を実感していることがわかります。
50名以上の講義科目ではオンデマンド型、それ以外の実験実習や演習、実技、ゼミなどでは対面授業が受講しやすい(P.3)
関西大学 2020年度秋学期実施「対面授業に関する学生アンケート」ダイジェスト版
知識伝達・習得であれば遠隔授業が効果を発揮し、対面授業ではそれ以外の資質・能力の育成に寄与しうる授業デザイン(双方向性の確保、アクティブラーニングの推進等)が求められる((P.).4)
(https://www.kansai-u.ac.jp/ir/taimen_survey_2020au_digest.pdf)
つまらない理由と改善策
つまらない理由① 動画コンテンツが長すぎる
該当する形式:オンデマンド授業
Youtubeやスタディサプリで学生はオンデマンド型の学習コンテンツに慣れています。それらは動画コンテンツとしてかなり作り込まれています。先生の授業はこれらと比較されてしまうんです。毎日のように動画を作っているYoutuberや本業の学習コンテンツ製作者と勝負しているんですから、簡単には勝てませんよね。例えば、人間は何分の動画なら集中してみることができるんでしょうか?
つまらない理由② 課題や質問にフィードバックがない
該当する形式:オンデマンド授業、リアルタイム授業、ハイブリッド授業
オンライン授業は課題が多すぎる学生が悲鳴をあげているをニュースが多数ありました。課題の「量」に着目されがちですが、学生が悲鳴をあげているのは「課題へのフィードバックがない」という点にもあります。課題を出しても採点されずコメントもない。提出できているのかが不安という声が多くの学生へのアンケート結果からわかります。
つまらない理由③ 授業が一方的すぎる
該当する形式:リアルタイム授業、ハイブリッド授業
授業が一方的に伝え続ける内容だと学生は「オンデマンド授業で十分じゃないの?」と考えてしまいます。さらに学生はオンデマンド授業には一定の評価をしています。自分のペースで学習できるからです。オンデマンド授業なら何度でも観かえせますし、自分の都合のつく時間に受講でき、1.5倍再生で観るという学生もいます。
でも、録画されていないリアルタイム授業やわざわざ対面で通学しているハイブリッド形式は時間も場所も制約があるのに、内容が一方的だとしたら不満にもなりますよね。
つまらない理由④ 操作や機材に不慣れ
該当する形式:リアルタイム授業、ハイブリッド授業
各大学のオンライン授業に関するアンケートを見ると、「教員がオンライン授業の機材、操作に不慣れ」という意見が多く聞かれます。先生方も2020年の急なオンライン授業への切り替えでは不慣れだったかもしれませんが、2021年は不慣れという言い訳が通用しません。
つまらない理由⑤ ハイブリッドでオンライン置いてけぼり
該当する形式:ハイブリッド授業
対面とオンラインを同時に進行するハイブリッド授業(ハイフレックス型授業)は両方に気を配りながら授業を進めるため、非常に難易度の高い形式です。気を抜いて対面の学生だけを相手にして、オンライン受講の学生を置いてけぼりにしていませんか?
あるいは、オンラインを「対面授業ののぞき穴」にしていませんか?オンラインで受講する学生の理解度を確認せず、発言の機会もなく、最後に課題だけを出していませんか?
つまらない理由⑥ 学生同士の意見交換がない
該当する形式:リアルタイム授業
早稲田大学の『オンライン授業に関する調査結果』では58.1%の学生が「友だちと一緒に学べず孤独感を感じる」という点をオンライン授業の改善点にあげています。
大学で学ぶことのもっとも大きなメリットの1つが多様な友人から刺激を受け、ともに学ぶことであることに多くの人は異論ないでしょう。受講者の多い授業では一人ひとりが発言する時間はありませんが、コミュニケーションできる場を設けることは無料で簡単にできます。
まとめ
いかがだったでしょうか?この記事では今後もなくならないオンライン授業(オンデマンド授業、リアルタイム授業、ハイブリッド授業)の改善点について解説しました。
つまらない理由 | すぐできる改善点 |
---|---|
動画コンテンツが長すぎる | Youtube動画の作成ノウハウを学びましょう 簡単にできるコツで動画のクオリティを改善! |
課題や質問にフィードバックがない | LMSを使ってフィードバックしましょう 質問はクリッカーソフトで集約してから答えると省力可 |
授業が一方的すぎる | GoogleForms、Slidoを使って学生が意見できる場を持ちませんか? 学生の意見や理解度に合わせて授業の進行を変えましょう |
操作や機材に不慣れ | カメラやマイクを変えるだけでも授業の配信品質は格段に向上します |
ハイブリッドでオンライン置いてけぼり | 耳を覆い隠さないワイヤレス骨伝導ヘッドセット! 対面とオンラインの両方の学生に声を聞き取りましょう |
学生同士の意見交換がない | LINEオープンチャットで学生同士が意見交換できる場を用意しましょう |
学生にとってすばらしい学びの機会が一歩でも半歩でも日々改善されることを願っています。
ツイッター(@nico|大学職員 ✕ ITエンジニア)ではブログの更新報告や関連ニュースをツイートしています。いいねやフォロー、ブログ記事へのコメントなどお気軽にいただけるとブログ更新の励みになりますので、ぜひお願いします。
コメント