2020年以降、社内SEの需要と競争率が同時に高まりつつあります。理由は2つです。
- DX推進の必要性が高まり、社内でITエンジニアが求められる場面が増えたこと。
- ライフワークバランスを重視した働き方が見直され、残業時間が少なく有給消化率の高い社内SEを希望する求職者が増えたこと。
DX推進れは新型コロナ感染防止を機にリモートワークやデジタル化が進んだことによるものです。それもまだ始まりにすぎません。今後は本質的なDX、つまり単なるデジタル化やデータ活用ではない「新しい価値を創出する改革のためのデジタル活用」を推進できる人材が求められます。
ライフワークバランスが取りやすい点も社内SEの求職者が増えつつある要因のひとつです。長い人生を考えると、1社に自分のすべてを賭ける働き方より自分の時間を活用して勉強したり、副業する時代へと明らかにシフトしています。
この記事では、社内SE・コーポレートエンジニアへの転職を考えている方に向けて、「転職活動の前に知っておくべきこと」を現役社内SE・中途採用担当する私が解説します。
- 文系大卒業後、国内大手SIerに就職。
- プロジェクトマネージャ&ソフトウェアエンジニア
- その後、MBAでマネジメントやHR領域を学ぶ
- 35歳をすぎてITエンジニアとして大学職員に転職(競争倍率 約200倍)
- 情報システム部門で管理職&プロジェクトマネージャ
- ITエンジニア職の中途採用を担当(書類選考、面接)
社内SEとは
社内SEの仕事内容は概ね下記のようなもので多岐にわたりますが、企業ごとにその責任範囲は異なります。専門領域ごとに分業化が進んでいるSIerと比較すると、社内SEの仕事は幅広いことがわかるかと思います。
- システム導入(システム開発含む)
- システム保守/運用
- PC等のIT資産管理
- ネットワークインフラ管理
- 情報セキュリティ関連
- システムやPC、ネットワークのヘルプデスク
- デジタルトランスフォーメーション推進
- システム監査対応
① 社内SEになるメリット・デメリット
メリット
社内SEに転職することで多くのメリットが得られます。よく言われるメリットは「システムを作って終わりではない」という点です。また、声に出して言わないことが多いメリットとして「ワークライフバランス」があります。
dodaの『残業の少ない仕事・多い仕事は?90職種別の残業時間ランキング∼コロナ禍で残業時間はどう変わった?∼』で、社内SEの平均残業時間は17.0時間であり、90職種中23位の残業の少なさ、職種分類「IT/通信系エンジニア」の中では残業の少なさは堂々の1位でした。
それ以外にも社内SEには以下のメリットがあります。
デメリット
一方、社内SEではSIerなどのITエンジニアと比べてデメリットもあります。
② 社内SEの待遇(勤務地、給与水準)
勤務地は本社勤務が多い
求人ごとに勤務予定地が示されていますが、総じて社内SEは本社勤務であることが多いでしょう。総務や人事、経理といったバックオフィス部門・コスト部門は本社勤務であることが多く、社内SEが所属する情報システム部門もコスト部門だからです。
給与水準は業界に準じる
社内SEの給与水準は、その会社の「業界の給与水準」「本社所在地」に準じると考えてよいでしょう。業界の給与水準は厚生労働省が発表している『産業別月間現金給与総額』を参照すると産業別の平均的な賃金がわかります。
また、平均賃金は都道府県によっても異なります。おおざっぱに言ってしまうと賃金は「都市>地方」という構図です。会社の本社所在地を確認しておきましょう。
③ 社内SEの仕事内容と求められるスキル
社内SEに必要なスキルは情報システム部門がその企業・組織の中でどのような役割を担っているのかによって異なります。逆に言えば、すべてのスキルを有している必要はありません! 例えば、「レガシーな技術か/DXなど新しい技術か」という観点と「大組織か/中小組織か」という観点で分類してみましょう。分類毎で求められる社内SEの役割・ポジションをまとめておきます。
① 大組織、かつレガシーな技術
大組織でレガシーな技術を求めるられる場合、情報システム部門内での役割は細分化されており、外部ベンダーへの委託も多いことから、あなたには管理者としての役割・ポジションを求められることが予想されます。例えば、プロジェクトマネージャやITサービスマネージャのような役割です。
② 中小組織、かつレガシーな技術
一方、同じレガシーな技術を使っていても中小規模の組織であれば、管理にかかる工数は小さくなる反面、社内SEが少ないため、広い範囲を担当するなんでも屋のような役割を求められることが予想されます。
③ 大組織、かつ新しい技術
大組織でかつ、技術的には新しいもの、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を担うようなケースであれば、あなたには組織間の利害関係を調整できるような役割・ポジションを求められることが予想されます。
④ 中小組織、かつ新しい技術
中小規模の組織でDXを進める場合は、基幹となるシステムは既存パッケージやSaaSで十分というケースが多い反面、パッケージに適合しない業務についてはかんたんなツールなら開発できるスキル、プログラミングやマクロツール開発、RPAなどのスキルが求められるでしょう。
④ 社内SEへの転職に有利な学歴・キャリア
有利な学歴は大学卒・大学院卒
社内SEへの転職で有利な学歴は「大卒・大学院卒」です。これは志望企業の新卒採用の基準を参考にすれば間違いないでしょう。SIerやWeb業界は学歴不問という会社もありますが、社内SEは大手になるほど「大卒・大学院卒」が条件として示されるケースが多いでしょう。
有利な職歴はSIerのマルチプレイヤー
社内SEへの転職では選考で有利になるキャリアがあります。それはSIer出身であることです。多くの活躍する社内SEに会ってきて、現在も中途採用の書類選考・面接を担当する私が言うので間違いありません。
- 組織マネジメントができる
- SIerで多数の顧客(会社)の業務を知っている
- 柔軟性/適応力が高い
- 自己研鑽の習慣が身についている
- 強いプレッシャーや過酷な状況を乗り越えてきた
SIer出身者のマネジメントスキル、広い業務知識と技術、適応力が評価されます。詳細は『社内SEへの転職ならSIerが圧倒的有利な5つの理由と活用法!現役採用担当が解説!』で説明しています。ただし、これらは「SIerだと身につきやすい」というだけのため、SIer以外のWeb系エンジニアやSES契約でSIerと仕事をしたITエンジニアでもこのような点をアピールすることで有利に選考を進めることができます。
では、未経験から社内SEになることはできないのでしょうか?正直に申し上げると、かんたんではありません。ただ、あなたが現在20代なら十分に可能性があります。30〜40代はこれまでのキャリアにもよりますが可能性はあります。
⑤ 社内SEへの転職に有利な資格は
社内SEの中途採用に有利な資格があるとしたら、今からでも取得しておきたいですよね。社内SEへの転職では資格そのものも重要ですが、同じくらい「資格を取得した目的」を採用担当者は見ます。なぜなら、資格と担当業務やキャリアプランがマッチしない人が多いからです。
そのため、これから社内SEへの転職を目指す人は、つぎのような目的で資格取得を目指しましょう。あるいはそのような目的で資格を取得したと面接で説明しましょう。
- ITストラテジスト
- PMPまたはプロジェクトマネージャ(PM)試験
- ITサービスマネージャ
- 基本情報技術者、できれば応用情報技術者
- 運用メンバーなら利用した技術に関するベンダー資格
なぜ、これらの資格が有利なのかについては『社内SEへの転職に有利な資格は?採用担当者は資格の●●を見てます!』で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。
⑥ 選考を勝ち抜く書類選考・面接のポイント
中途採用面接で聞かれるのは大まかに「志望理由」と「自己PR」だと考えてよいでしょう。書類選考でもこの2点に注力しましょう。しかし、採用面接をしていると「志望理由」と「自己PR」を混同している人が非常に多いのです。
- 志望理由=「すぐに辞めない」ということを語る(≠自己PRではない)
- 自己PR=「活躍できる」ということを語る(≠自分のハイスペックさのアピールではない)
志望動機
志望理由は「すぐに辞めたりしませんよ」ということを語るパートです。どれだけあなたが優秀で、募集条件にマッチする人でも「すぐに辞めちゃいそう」と採用担当が思ったら内定をもらうことはできません。採用側は高いお金を払って採用するので当然ですね。だから採用側を安心させる必要があるんです。
だからといって、志望理由に「御社はここがすばらしい!!」ばかり説明する人がいますが、これだけでは不十分です。採用側は何十人も面接しているので、残念ながら刺さることはないでしょう。ではどうすればいいのでしょうか?次のような流れで説明しましょう。
- 自分が今回の転職で実現したいことを語る
- 志望企業の魅力を語る(御社のここがすばらしい!)
- 上記の1と2がばっちり合致していることを語る
志望動機の重要性とテクニックについては『【例文あり】社内SEへの転職の志望動機に必要な3要素!現役社内SEが書き方を解説!』
自己PR
自己PRでは「私は御社で活躍できます」ということを説明しましょう。そのためには次のような流れで説明します。詳しい流れとテクニックは『中途採用の面接では「再現性」を証明すべき!自己PRの具体的な流れを解説!』で説明しています。
- 御社が求める人材像って、こういう人材・スキルですよね?
- 私、そのスキルも経験もあります!(エピソードの紹介)
- 入社したら、具体的にこういうことができますよ!(再現性の説明)
面接は準備がすべて
中途採用の面接は新卒採用に比べてかなり対策がしやすい内容です。会話の中心が”仕事”なので、奇策はつうじません。これまでの経歴をただまんべんなく話すのではなく、志望企業の情報システム部門がどのような人材を求めているかを把握して、それに合致したスキル・経験をアピールしましょう。
⑦ おすすめの転職エージェント
ここまで社内SEの仕事や求められるスキル、そして有利なキャリア・資格について説明してきました。そして社内SEへの転職を目指す場合の志望動機と自己PRについて解説しました。ただ、これはあくまで採用担当者の意見であり、世の中にはたくさんの社内SE求人があります。
転職を失敗に終わらせないためにも、転職エージェントに会ってあなたが志望する企業の条件を伝えてみましょう。その際、大手転職エージェントだけではなく、社内SEの転職エージェントにも会うことを私はおすすめします。それは企業によって情報システム部門に求められる役割が異なるためです。IT業界全般に詳しいエージェントと併せて、社内SEへの転職を専門にするエージェントの意見は満足度の高い転職に役立ちます。ぜひ『失敗しない社内SEへの転職なら大手とあわせて社内SE専門エージェントに会おう!』を参考にしてください。
社内SEへの転職に特化した転職サービス『社内SE転職ナビ』がおすすめです。社内SE(いわゆる情報システム部門)の形はユーザー企業ごとにさまざまです。プログラミングまでやる会社もあれば、ベンダー管理のみという会社もあります。
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まとめ
いかがだったでしょうか?この記事では社内SEに転職することのメリット/デメリット、社内SEが求められるスキル、転職に有利なキャリア/資格、そして選考段階の志望動機と自己PRの書き方について解説しました。
社内SEの仕事や待遇について興味を持たれた方はぜひ転職エージェントに会って情報収集をしてみませんか?本記事ではおおまかな概要のみを伝えています。情報収集から選考までの流れについてはつぎの記事で詳しく紹介しています。興味を持った方は参考にしてみてください。
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