この記事では情報処理推進機構(IPA)が実施する基本情報技術者試験に合格したい初学者向けに試験の概要、対策の概要、午前・午後別の対策方法について解説します。
わたしは文系大学を卒業後、日系の大手SIerに入社して1年目に基本情報技術者に合格しました。その後、応用情報技術者試験やプロジェクトマネージャ、ITサービスマネージャなどに合格、SIerでは文系大学卒を含む新人教育プログラムの企画、カリキュラム設計、教育組織の運営、フォローアップを行ってきました。
その結果、ほぼすべての新人エンジニアが基本情報技術者試験に合格し、立派なソフトウェアエンジニア、インフラエンジニアとして現場で活躍しています。受験すると決めた方はぜひこの記事を参考に試験対策をして、合格を目指してください!
- 基本情報技術者試験を受験しようか迷っている方
- 基本情報技術者試験を受けたいが何から始めたら良いかわからない方
- 過去に受験したが、不合格で何を改善すれば良いかわからない方
- 文系大学を卒業後、日系大手SIerに就職
- 入社1年目にイチから勉強して基本情報技術者を取得
- 応用情報、プロジェクトマネージャ等の高度試験、PMPに合格
- SIerで新人教育カリキュラム企画・運用を担当(100名以上を担当)
- 35歳をすぎて大学でシステム戦略、プロジェクトマネジメント担当
基本情報技術者試験とは
基本情報技術者試験は情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験です。プログラマーやシステムエンジニア業務に従事する人やこれからそのキャリアをスタートさせる人を対象にした試験内容になっています。
基本情報技術者試験と似た試験にITパスポート試験があります。ITパスポートは「利用者視点」に経った基礎的な試験です。一方、基本情報技術者試験は「開発者視点」に立った試験です。そのため、プログラムやアルゴリズム、データ構造やコンピュータシステムの基礎といった内容が出題されます。
プログラムとかデータ構造って、むずかしそう。
独学で合格できるの?
対策講座や通信教育コースもありますが、この記事を参考に正しい対策をすれば、独学でも2ヶ月の対策で合格できますよ!
もし、基本情報技術者(FE)試験か、ITパスポート試験かどちらかで迷っている方はこちらの記事が参考になるかもしれません。『ITパスポートか基本情報技術者か、あなたが受けるべき資格はどっち!?難易度と評価を解説』ぜひご覧ください。
合格のメリット
基本情報技術者試験に合格するメリットは以下のとおりです。
- プログラマ、システムエンジニアの業務に必要な基礎的な知識が体系的に学べる
- 会社によっては報奨金や手当がもらえる
- 応用情報技術者試験やプロジェクトマネージャ試験などの上位資格に必要な基礎知識が学べる
- 20代なら転職のときに「基礎力」の証明になる
基本情報技術者試験はその名のとおり、今後ソフトウェアエンジニアやインフラエンジニアなどあらゆるITエンジニアとして実務に就くうえで必要な基本的な内容を網羅した資格です。いわばITエンジニアの普通運転免許のような位置づけと言えます。
今後、ITエンジニアとしてのキャリアを目指す新人エンジニア・駆け出しエンジニアの方は取っておいて損はありません。
試験の概要
では、基本情報技術者試験とはどのような試験なのでしょうか?その実施概要や試験内容の概要について解説します。
対象者像
試験を主催する情報処理推進機構(IPA)は基本情報技術者試験の対象者像を以下のように定義しています。
高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者
引用:情報処理推進機構 公式WEB(https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/fe.html)
同WEBサイトでは「期待する技術水準」を定義しています。要約すると合格にはつぎのレベルを求めています。
- ITを活用した戦略立案や提案活動を上位者の指示のもとで実施できる。
- ITに関する基礎的な知識を理解し、上位者の指示のもとでシステム設計、開発、運用ができる。
受験者層
受験に条件や受験資格は設けられていません。受験者の多くは学生や20代の駆け出しエンジニアの方が多いように思います。ただ、受験会場では30代や40代と思われる方も一定数います。
情報処理推進機構(IPA)が公表している統計情報によると、令和2年度の基本情報技術者試験受験者の平均年齢は25.0歳、合格者の平均年齢は24.4歳でした。この傾向は直近10年間でほとんど変わっておらず、24〜26歳あたりです。
試験日程
令和2年度以降、基本情報技術者試験は上期と下期の一定期間中に受験するCBT(Computer Based Testing)方式で試験が実施されています。例えば、令和2年度下期は令和3年1〜3月に開催されました。令和3年度上期は令和3年5〜6月に開催されました。
情報処理推進機構(IPA)のCBT方式ははじまった間もない制度で、新型コロナウイルスの感染状況を鑑みながら開催時期が決定されているように思われます。公式WEBのCBT方式案内ページを注意してみるようにしましょう。
試験構成
眠くなってきた…
試験の中身の話になりますよ。がんばりましょう!
試験構成は午前と午後に分類されます。
午前 | 午後 | |
---|---|---|
試験時間 | 150分 | 150分 |
出題形式 | 多肢選択式(四肢択一) | 多肢選択式 |
出題数 解答数 | 出題数:80問 解答数:80問 | 出題数:11問 解答数: 5問 |
試験範囲はつぎのとおりです。公式WEBで下表のとおり定義されていますが、つまり「幅広く出題される」ということです。午前は3つの分野から出題され、おおよそテクノロジ系50問、マネジメント系10問、ストラテジ系20問という構成で幅広く出題されます。
合格基準
午前、午後とも100点満点中それぞれ60点が合格基準になっています。午前・午後の合計で60点ではありません。午前・午後の両方でそれぞれ60点以上を取る必要があります。
午前免除制度
基本情報技術者試験には午前試験が免除される制度があります。情報処理推進機構(IPA)が認定した講座を修了したうえで、IPAが提供あるいは審査した試験に合格することが条件です。コースを提供するスクールによっては合格率は90%を超えます。
こちらの記事で午前免除制度について解説しています。費用が2.5万円〜3.5万円程度かかりますので、対策費に余裕がある方や絶対に合格したい方におすすめの制度です。『基本情報技術者(FE)試験の午前免除制度とは?メリット・デメリット、合格率93%のおすすめ講座を解説!』
難易度(合格率)
基本情報技術者試験の合格率は令和2年度から大幅にアップして、約50%になりました。
受験した2人に1人が合格している計算です。令和元年(2019年)までは長らく25%程度の合格率だったので、合格できる可能性が2倍になったと言えます。
対策の概要
総対策時間は100〜200時間
ここからは基本情報技術者試験に合格するための対策について解説します。初学者が合格レベルに達する目安時間は100〜200時間程度です。過去に一通り対策したうえで受験した経験者は50時間が目安になります。
対策の基本的な考え方
では、どのように対策を進めていくと良いでしょうか?ここでは午前・午後に共通する大まかな流れと基本的な考え方をステップに分けて解説します。
ここ、非常に重要です!
ステップの緑テキスト部分だけでも読んでおいてくださいね。
試験要網で試験範囲や試験形式についてざっと理解しよう!
基本情報技術者試験とは「どのような分野の知識が必要か」「どのようなレベルで必要か」といったことが情報処理推進機構(IPA)の公式WEBに定義されています。長い文書ですので、1時間以内でさらっと内容を確認しましょう。
はじめて受験する方は知らない単語がたくさんでてきますが、深く気にする必要はありません。「ああ、これだけ覚えることがあるんだな」というくらいでざっと流すだけで問題ありません。
情報処理技術者試験「試験要網」
P. 3「試験の対象者像」
P.25「出題範囲ー午前」
P.33「出題範囲ー午後」
P.42「分野別出題数ー午後」
まずは過去問題を解いて、得意分野・苦手分野を把握しよう!
いきなりですが、午前も午後も過去問題を解いてみましょう。「え…なにも勉強してないのに?」と思われるかもしれませんが、まったく問題ありません。
基本情報技術者試験は試験範囲が非常に広いので、対策本の1ページ目から対策していたのでは時間がかかりすぎます。あなたの得意分野・苦手分野を把握したうえで対策することが重要です。
過去問と解答は情報処理推進機構(IPA)の公式WEBからPDFでダウンロードできます。紙で印刷して午前150分、午後150分でやりきってください。
情報処理技術者試験「過去問題・解答例」
過去問題を採点して得意分野・苦手分野を把握しよう!これが対策の地図になる!
過去問題を解いたら、自分で採点しましょう。解答もSTEP2の公式WEBからPDFをダウンロードできます。
採点結果のうち、午前の結果に着目しましょう。80問60問正答したら本番でもほぼ確実に午前をパスできるでしょう。それ以外の方は、80問をSTEP1で確認した「出題範囲ー午前」の分野に分類して、分野毎の採点をしましょう。(厳密に分類できる必要はありません)
これであなたのおおまかな得意分野と苦手分野が把握できましたね。納得いかない方はもう1回分、午前問題だけでもトライして同様に分野毎に分類して採点しましょう。
分野単位にテキスト学習→対応する設問を解く。インプット:アウトプット=5:5が目安!
テキストや動画教材はかならず分野の単位に章立てられています。得意分野は時間をかけずアウトプットのみ、苦手分野は8割ぐらい理解するまでテキストでインプットして、対応する問題でアウトプットして理解度を測りましょう。
過去問の流用率は50%!!過去10年分をひたすら解きまくることで合格率アップ!
得意分野と苦手分野に応じたインプットとアウトプットの対策が一通り終わったら、ここからはひたすら過去問題を解いて、解いて、解きまくることで合格率をあげます。
情報処理推進機構(IPA)の試験の中でも午前問題は流用率が非常に高く、毎回約半分の40問が過去に似た形で出題された問題を流用していると言われています。流用元は直近10年分の試験ですので、この10年分を徹底的にやり込んで、間違えた問題はテキストに戻って学び直すというサイクルが重要です。
克服すべき苦手分野・放置してよい苦手分野
過去問題で把握した得意分野と苦手分野に対して、すべての分野を高いレベルで理解できるのが理想です。
どうしても苦手分野が克服できない…
苦手でも絶対に克服すべき分野と放置してよい分野があります。
そのカギは午後問題にあります。
午後問題は下表のとおり11問出題され、その中から5問を選択して解答します。ぜったいに避けられない「必須解答問題」の分野はどんなに苦手でも逃げずに理解しましょう。
- 情報セキュリティ
- データ構造及びアルゴリズム
- ソフトウァア開発
- ソフトウェア・ハードウェア
- データベース
- ネットワーク
- ソフトウェア設計 の中で1つは放置可
- プロジェクトマネジメント
- サービスマネジメント
- システム戦略
- 経営戦略・企業と法務 の中で1つは放置可
午前対策
午前対策の考え方
午前対策のポイントは以下のとおりです
- とにかく過去問題をときまくる(本番は問題の約50%が過去問10年分からの流用)
- マネジメント系、ストラテジ系は丸暗記でほぼ対応可能
- テクノロジ系の計算問題はテキストの解法・解説でしっかり理解する(解説がイマイチなら別のテキストを当たる)
- 計算問題はかならず検算するクセを付ける(計算ミス、単位ミスを検出)
- 四択を1つに絞れなくても消去法で正答率をアップできるように!
- 選択肢に知らない単語が1つ出てくるレベルなら十分合格可能(知っている残り3つの選択肢でそれが正答か判断できる)
おすすめ教材① 動画で挫折せず基礎を学ぶ
基本情報技術者試験の対策では「挫折しないこと」が重要です。でもテキストを開くと、いきなり2進数や16進数、メモリやCPUの仕組みに関する解説から始まり初学者はここでいきなり挫折してしまいます。さらに、テキストは分厚くて通勤時間や休憩時間に少しずつ読むのに不向きで、かんたんに挫折させられてしまいます。
そんなあなたにわたしがおすすめするのは動画教材です。Udemyの『~始めから効率よく学ぶ~ 基本情報技術者試験 最速 合格講座』は動画で基本情報技術者試験の出題範囲を解説してくれます。
テキストだと頭に入らない人は、動画を受け身で受講してもかまわないので、まずはすべての試験範囲を流してください。通勤電車で流し見するだけでも十分です。
\ 10.5時間のていねい解説 /
Udemyを知らない、使ったことがない人に向けて、つぎの記事でかんたんに解説していますので、興味があればご覧ください。
おすすめ教材② テキストで詳細まで理解する
動画教材で一通り学んだら、詳細はテキストで理解しましょう。動画の解説では十分理解できなかった分野を中心に取り組みましょう。
テキストは図解やイラストが豊富に入っているものを選びましょう。わたしが初学者におすすめするなら、『キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者』です。全編イラストで解説されていて、その内容はSIerが新人教育で学ぶようなレベルの品質です。
おすすめ教材③ 2〜3万円の余裕があれば午前免除
基本情報技術者試験には午前試験が免除される制度があります。午前免除試験に合格することが条件で、スクールによっては合格率は90%を超えます。費用が2.5万円〜3.5万円程度かかりますが、余裕がある方や絶対に合格したい方にはおすすめの制度です。詳細は『基本情報技術者(FE)試験の午前免除制度とは?メリット・デメリット、合格率93%のおすすめ講座を解説!』を参考にしてみてください。
午後対策
午後対策の考え方
午後対策のポイントは以下のとおりです
- 問1〜問5は午前試験の対策ができていれば、知識は十分。
- 問1〜問5は「A社のシステムでは〜」という出題形式で、国語の問題だと考えてOK。
- 問6の「データ構造及びアルゴリズム」は必須解答問題なので逃げない!知識レベルは午前試験のレベルでOK。ただし出題方法は午前と違うので過去問で10年分(計10問)かならず対策する。
- 問7〜問11はC言語、Java、Python、アセンブラ言語、表計算から1問選択するが、プログラミング経験があるならその言語を選択!経験がなければ表計算を選択することをおすすめする
おすすめ教材③ 午後に絞った対策本ならこれ!
午後試験のアルゴリズムがどうしても克服できない
こういう方は一定数います。これはあなただけではありませんので、なにも心配は必要ありません。アルゴリズムに特化して対策したいなら『うかる! 基本情報技術者 [午後・アルゴリズム編] 2021年版 福嶋先生の集中』をおすすめします。
このテキストは初学者向けにイラストと図解で丁寧に解説しています。「自動販売機」や「じゃんけん」のアルゴリズムを例にしており、非常にわかりやすい構成です。
おすすめ教材④ 午後の表計算に絞った対策本ならこれ!
午後試験の問7〜問11で、JavaやPythonのプログラミング経験がない方は表計算(Excel+マクロのイメージ)を選択されると効率的に対策できます。JavaやPythonで対策するには合格レベルになるまでに必要な時間が長くなりがちですが、表計算はそのレベルに達するのが早いためです。
表計算対策に特化して対策したい場合は『基本情報技術者 表計算 とっておきの解法』がおすすめです。プログラミングで表計算を選択されるなら対策はこの1冊で完結できる内容になっています。
まとめ
いかがだったでしょうか。この記事でははじめて基本情報技術者試験を受験する方を対象に受験のメリット、対策概要、対策方法を解説し、おすすめ教材を紹介しました。
基本情報技術者はこれからITエンジニアのキャリアをスタートさせる、あるいはスタートして間もない20代の方にピッタリの資格です。合格率は令和2年度に大幅にアップしており、受験するなら今がチャンスです。
また、本番の試験問題の約50%が過去10年分の問題からの流用問題です。そのため、とにかく挫折せずあきらめずにテキストを動画でOKなので一通りインプットして、あとは過去問題を解いて、解いて、解きまくるという方法で合格できる試験だと言えます。
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