社内SEならファシリテーション力を鍛えよう!なぜ議論が空回りするのか?

社内SEならファシリテーション力を鍛えよう

 社内SEに求められるスキルのうち、もっとも重要なスキルの1つが「説明力」です。そして、説明力とセットで必要になるのが、議論をまとめる「ファシリテーション力」です。ファシリテーション力、ファシリテーションスキルと言うと「場のデザイン、対人関係、構造化、合意形成」とよく耳にしますが、正直少し難しく感じます。

 この記事では、なぜ議論がうまくいかないのかという切り口でその原因を明らかにして、その対策として「会議の準備」「会議運営」「会議後」の流れに沿って、「ファシリテーターに求められるアクション」を解説します。

この記事でわかること
  • なぜ、その会議は空回りするのか?
  • 会議を空転させないための参加度・共有度の高め方
  • ファシリテーションの具体的なテクニック
  • ファシリテーターの頭の中はどうなっているか?
ブログ管理者のプロフィール
  • 文系大卒業後、国内大手SIerに就職
  • プロジェクトマネージャ&ソフトウェアエンジニア
  • その後、MBAでマネジメントやHR領域を学ぶ
  • 35歳をすぎてから大学の情報システム部門へ転職(競争倍率 約200倍)
  • SIerや情報システム部門で多くのシステム導入をマネジメント
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なぜ、その議論は空回りするのか?

 会議の議題がどんなにかんたんでも、なにも準備せずに臨むと会議は空回りすることがあります。あるいは誰も発言しなかったり、いつも同じ人だけが発言したり…。

 会議がうまくいくには「出席者の参加度が高い」かつ「情報が出席者に共有されている」必要があります

 参加度とは会議に関心があって、積極的なアウトプットがある状態です。そして、共有度が高い状態とは議題や課題、発言の要点を参加者が等しく認識している状態です。これらが低いと下図のような状態になります。

参加度と共有度を高める方法は?

 では、出席者の参加度と情報の共有度をそれぞれ高めるためにはどうすればいいのでしょうか?ここではポイントだけ解説します。

参加度を高めるためのポイント

 出席者の参加度を高めるために、次のポイントに気をつけましょう。

  • 会議のゴールは明確か?
  • 問題は明確か?
  • 参加者は必要な人だけに絞られているか?
  • 発言内容と発言者の人格は切り分けられているか?
  • 発言を妨げる・否定する人はいないか?

共有度を高めるためのポイント

 会議に沿ってリアルタイムに目に見える形で情報を共有するために、つぎのポイントに気をつけましょう。

  • 議論されている「論点」は明確にできているか?
  • 発言の要点(キーワード)は共有されているか?
  • 課題と課題、課題と対策などの関係性が図解されているか?
  • 事実と意見は切り分けられているか?
  • 議論の結果は共有されているか?

もう少し具体的な方法

 つぎに、出席者の参加度と情報の共有度をそれぞれ高めるために具体的にどうすればよいのでしょうか? 上で挙げた10のポイントを会議準備から進行、会議終了までの流れに沿って、具体的なアクションを解説します

STEP1 会議の準備

 会議の準備では、まず「会議の目的(=ゴールの明確化)」「議論したい内容(=問題の明確化)」を設定します。これを整理しないと始まりません。正確には、会議は始められますが、失敗に終わります。現在どのような状態で、会議後にどのような状態になりたいのか。そのために何を議論すべきなのかを

  • 会議の目的(=ゴールの明確化)…
    現在どのような状態で、会議後にどのような状態にしたいか
  • 議論したい内容(=問題の明確化)…
    会議の目的を達成するために何について議論する必要があるか

 つぎに、設定したゴールと問題を議論するなら、誰に出席してもらうべきかを把握する必要があります

なにを今さら当たり前でしょ

この当たり前が超重要で、かつ人任せにしていることが多いんです

 出席者の参加度合いが低い原因のひとつに「そもそも参加すべき人ではない」があります。どれだけあなたがうまくファシリテーションをしてもその人の参加度合いは高まりません。なぜなら、この問題に関心がない(あるいは関心を持つポジションではない)からです。

 一般的に出席者が増えれば増えるほど、出席者の参加度合いは低下し、ファシリテーションの難易度は高くなります。だから、事前に参加者を絞る必要があるのです。会議のゴールと問題に取り組むべき人だけを集められるようにしましょう。そのためにも常日頃から社内の情報収集、キーパーソンの把握が欠かせません。

 ゴールと問題を明確にして、出席者が決まれば、最後にアジェンダを作って当日を迎えましょう。

STEP1会議の準備のポイント
  • 会議のゴールと議論すべき問題を明確にしましょう
  • 会議の出席者を減らしましょう(本当に参加すべき人だけにする)
  • 当日のアジェンダを作成しましょう

STEP2-1 会議の進行(冒頭)

 続いて、会議の開催になります。会議の冒頭で出席者へ伝えるべき事項が2つあります。

  • 会議のゴールと課題を明示する…
    あらかじめ考えたゴールと課題を参加者の目に見える形で共有する。
  • 会議で注意してほしい事項を伝える…
    参加度を高めるために会議中に注意してほしいことを伝える。詳細は後述。

 ゴールと課題を伝えるのは当たり前ですね。でも口頭で伝えるだけでは不十分です。会議が進むと多くの参加者が会議のゴールを忘れていることがあります。必ず、アジェンダを全員の目に留まるところに示しましょう。あるいは会議資料に頻繁に出てくるようにしましょう。

 また、議論すべき課題を常に示すことで1人の参加者による独壇場を予防することもできます。

これでみんなが等しく話せるね

でも「個人攻撃」や「発言の責任を取らされるから発言したもん負け」という事態が発生する場合もあるんだ

 そうならないように、参加者には冒頭でつぎのような点を伝えるようにします。

  • ブレストや解決案を話し合うときには頭ごなしに否定しない
  • 発言内容と発言者は分けてとらえる

STEP2-2 会議の進行(議論)

 会議が始まったら、ファシリテーターとして議論の共有度を高めることに努めましょう。そのために議論される内容をホワイトボードに書いたり、プロジェクターに映して常に参加者から見えるようにしましょう。

 具体的には、つぎのようなポイントに気をつけながら議論を記録していきます。

  • 発言のポイントを押さえてメモを残す
  • 発言を整理する
  • 図解する(構造化ツリー図、マトリックス、フロー図)
  • 発言の関係性を示す
  • 意見と事実は分離する
  • 5W1Hを補完する

 会議の進行をしながらこれらの点に注意を払って記録を残すのは、慣れるまではかなりハードに感じます。慣れるまでは進行(ファシリテーター)と記録(マーカー)の2名体制でできると良いでしょう。

STEP2 会議の準備
  • 会議の冒頭でゴールと課題を伝えましょう
  • 参加度を高めるために、会議の注意点を伝えましょう
  • 共有度を高める記録と図解を身につけましょう

STEP3 会議終了の前に

 会議が終わる前に、必ず会議の決定事項と未決定事項を明確にしましょう。会議の決定事項を明確にするのは一般的ですが、あなたが開催する会議では「未決定事項」が不明瞭になっていませんか?

 会議開始時に「ゴール」を決めているからこそ、「未決定事項」が明確になり、次回に向けた宿題が明らかになるのです。

 そして、重要なのは参加者との合意形成をその場で行ってしまうことです。数日後に議事録を送って「そんなつもりじゃなかった」というようなちゃぶ台返しに遭わないために、重要な決定事項についてはその場で合意形成しましょう。そのためにもわかりやすい要点メモと図解をみんなの前で書きながら共有することが必要なのです。

STEP3 会議終了の前に
  • 会議の結論や決定事項を参加者に共有する
  • 同様に、未決定事項も共有する
  • 結論はその場で合意形成する

ファシリテーションのおすすめ本2冊

 私自身はこれまで何度も何度もファシリテーターを務めることでスキルを身につけてきました。業務改革のための議論となるとピリピリした雰囲気で始まるので、ファシリテーション力を鍛えるのにうってつけの場だったと言えます。

 そんな私が「これからファシリテーション力を伸ばしたい」「今の会議がうまくいかない」という人に自信を持っておすすめできるのはつぎの2冊です。

ファシリテーション・グラフィック ー議論を「見える化」する技法

 『ファシリテーション・グラフィック ー議論を「見える化」する技法』は、ファシリテーターが身につけるべき会議の進行方向や図解の方法をわかりやすく解説しています。それだけでも十分高評価なのですが、この本を手にとる一番のメリットは「優れたファシリテーターの頭の中がのぞけること」です。

 「噛み合わない会議」「定例会議」「合意形成が必要な意思決定会議」といったテーマで、参加者による会話の横でファシリテーターが「どのようなことを考え」「どのようなことをホワイトボードに書いたのか」を進行に沿って見ていくことができます。これが非常に勉強になるんです。ぜひ手にとってファシリテーターの頭の中をのぞいてください。

プロジェクトファシリテーション

 『プロジェクトファシリテーション』は古河電気工業の人事BPRプロジェクトをファシリテーションという切り口で語るノンフィクションです。著者の白川さんはケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタントとして実際にプロジェクトに参画したファシリテーション界隈では有名人です。

 ファシリテーションを学びたい人にとってヒントがたくさん書かれているうえに、現場のヒリヒリするようなリアリティのある議論ややりとりが記されているので、自分ならどうするだろうかというシミュレーションにぴったりの内容です。

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