GIGAスクール構想についてまとめてみた

 令和元年(2019年)12月に文部科学省(以下、文科省)は『GIGAスクール構想』を発表しました。これに合わせて、GIGAスクール構想推進本部が設置されたのですが、中身がイマイチよくわからない…。ちなみに、『GIGA』は『Global and Innovation Gateway for All』の略とのこと。もう迷いそう…。

 今回はそんな『GIGAスクール構想』について、まとめてみました。

目次

GIGAスクール構想とは

 文科省のWEBサイトで確認すると以下の資料がその概要を説明しています。文科省の資料は、省庁あるあるの「パワポに小さい文字がいっぱい詰め込まれた説明」でした。

萩生田文部科学大臣のメッセージ
子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けて~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~

全体概要
(リーフレット)GIGAスクール構想の実現へ (PDF:4.0MB)

 xtech.tv が考えるポイントをご紹介します。

『GIGAスクール構想 3つのポイント』
  1. すべての学校に高速インターネット環境を整備する。【費用補助あり】
  2. すべての生徒に学習用PCを準備する。【費用補助あり】
  3. 教員の業務負荷を低減する(そのための統合型校務支援システム導入、ICT支援員活用)

 では、1〜3について、ひとつずつ見ていきましょう。

① すべての学校に高速インターネット環境を整備する

 1つ目のポイントは学校内のネットワーク環境の整備です。文科省からは標準仕様が提示されています。

・ハブやルーター等は将来の市場展開に応じて変更できるようにしておき、現時点では1Gbpsの普及モデル
・全教室で全校生徒が一斉にインターネットを使うことを想定して無線アクセスポイントを設置
・大容量の動画視聴やオンラインテストをストレスなく行えること
・プライベートな環境へのサーバ設置は最低限にする
・電源キャビネットの整備

校内通信ネットワークの整備にかかる費用においては、以下の補助が用意されています。

 さらに、標準仕様を活用することで、都道府県レベルでの共同調達を推奨しています。同時に私が懸念したのは以下の点です。

公立・私立で1/2を補助、国立は定額補助

懸念点
ネットワーク環境の構築費用は補助対象であるが、ランニング費用は都道府県や地方自治体が将来に渡って負担するものと思われる。それを前提にしたとき、果たして「全教室で全校生徒が一斉にインターネットを使う」必要があるのか?それを想定してアクセスポイントやフロアスイッチに多額のランニングコストをかけるべきなのか?

② すべての生徒に学習用PCを準備する

 2つ目のポイントは生徒用PCの準備です。つまり、生徒一人ひとりにPCを1台用意するという話です。準備においては、本来、学校毎の活用方法に応じて柔軟に調達すべきであるという主旨で前置きしつつ、文科省からは3つの標準的なモデルが提示されています。

Microsoft Windows

OS:Windows 10 Pro
CPU:Inter Celeron 同等以上
ストレージ:64GB
メモリ:4GB
画面:9〜14インチ

Google Chrome OS

OS:Google Chrome OS
CPU:Inter Celeron 同等以上
ストレージ:32GB
メモリ:4GB
画面:9〜14インチ

iPad OS

OS:iPad OS
ストレージ:32GB
画面:10.2〜12.9インチ

 あくまで「モデル」なので、各自治体・各学校が活用方法を検討した上で調達のための仕様を決定すべきでしょう。そのため、例えば「ビデオ通話を用いた学習のためにインカメラが必要だ」といったことも考えるべきでしょう。

 家庭でもお子さんのためにPCを準備される場合におすすめのPCを紹介した記事もありますので、参考にしてください。実際に学校のPC教室でも使われているものです。

 個人的には、文科省が提示した標準仕様について、2つの懸念があります。あくまで標準仕様なので、文科省も「そこは自分で考えなさい」が基本的な姿勢だとは思いますが、念のため。
クラウドを前提とした簡易なPCであるとはいえ、Windwos 10 Proを4GBで動かすのは「ストレスなく」は難しいのではないか。それであれば、クラウドを前提に、Chrome OSの方が軽快に動作する。

懸念点
文科省の標準モデルは画面が9〜14インチであるが、あまりに小さな画面では視認も操作も難しいため、12インチ、できれば13インチ以上が望ましい

 学習用PCの準備にかかる費用においては、以下の補助が用意されています。

公立は定額4.5万円/生徒1名、私立で1/2(上限4.5万円)、国立は定額(上限4.5万円)を補助。

 なお、文科省のWEBサイトGIGAスクール構想の実現についてには、「自治体ピッチ」という欄で、各ベンダーによるGIGAスクール構想用のPC販売プランのプレゼンテーションが動画で掲載されています。DELLやASUS、ソフトバンクC&S等のベンダーが提案プランを10分程度で説明されていますので、リンクを貼っておきます。

③ 教員の業務負担を軽減する(そのための統合型校務支援システム導入、ICT支援員活用)

 ポイントの3つ目は教員の業務負担を軽減することです。

 文科省はICTを教育現場に積極導入することと並んで、学習ツールのクラウド化を強く推奨しています。生徒一人ひとりにPCを準備し、さらに学習ツールを導入するとなると、教員の負荷増大は想像を絶することが容易に予想されます。そのためにも、統合型の校務支援システムの導入ICT支援員の活用を進めるべきではないでしょうか?

 というのも、教育現場においてICTの活用に積極的な教員とそうではない教員の二極化が進んでいると感じます。例えば、教育研究家 妹尾 昌俊氏の『withコロナ×GIGAスクール構想における公教育の転機と課題』において、アンケート結果で新型コロナウイルス感染症予防のための一斉休校後も教員のICT活用意欲が低いことが指摘されている。

出典:妹尾 昌俊氏『withコロナ×GIGAスクール構想における公教育の転機と課題』 Shareslideから引用

 新型コロナウイルス感染症以前から教員の労働環境は、長年問題視されてきました。『GIGAスクール構想の実現』によって、それが限界点を迎えないか(すでに限界点を迎えているという指摘もあるかと思いますが)、心配でなりません…。

 統合型校務支援システムの導入は文科省が手引きを出していますので、リンクを貼っておきたいと思います。
統合型校務支援システムの導入のための手引き
この手引きや業務効率化の事例についても、別のエントリーで取り扱えればと思います。

 また、ICT支援員についても文科省は「4校に1名」程度必要であると説明しています。ICT支援員を最大限活用することで教員の負荷低減が求められるのでは、と考えています。

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