情報処理技術者試験『プロジェクトマネージャ試験』は『昇格に役立つIT資格』『いる資格 いらない資格』などで常にベスト5に入る価値ある資格です。
さらにスゴイのは、『AWS(Amazon Web Services)認定』や『情報処理安全確保支援士』など次々と新しい人気資格が現れるIT業界において、この『プロジェクトマネージャ試験』は2002年から約20年近くに渡ってトップ5を維持しているんです。
プロジェクトマネージャ試験は決して簡単に合格できる試験ではありませんが、正しく対策すれば誰にでも合格できるチャンスのある試験です。私は50時間程度の準備で合格することができました。 この記事では、プロジェクトマネージャ試験に合格するための対策、おすすめテキストをご紹介します。
- 文系大卒業後、国内大手SIerに就職
- PMP&IPAプロジェクトマネージャ(PM)ホルダー
- MBAでマネジメントやHR領域を学ぶ
- 35歳をすぎてから大学の情報システム部門へ転職(競争倍率 約200倍)
- 情報システム部門の中途採用者の書類選考、面接を担当
プロジェクトマネージャ試験を含む『高度試験』に苦手意識を持っている方は高度試験合格のコツをまとめた記事もありますのでぜひ参考にしてください。
試験概要
試験実施要領
プロジェクトマネージャ試験の受験チャンスは年に1回だけです。例年10月の第3日曜日に実施されます。また、受験資格に制限は設けられていません。
プロジェクトマネージャ(PM)試験は2020年まで「例年4月の第3日曜日」に試験が実施されていました。しかし2020年の新型コロナウイルス感染拡大防止のため、10月に試験が実施されて以降、毎年10月に開催されています。
試験時間・出題形式・問題数(解答数)は例年下表のとおりです。
午前1 | 午前2 | 午後1 | 午後2 | |
---|---|---|---|---|
試験時間 | 9:30-10:20(50分) | 10:50-11:30(40分) | 12:30-14:00(90分) | 14:30-16:30(120分) |
出題形式 | マークシート形式 (四肢択一) | マークシート形式 (四肢択一) | 記述式 | 論述式 |
出題数(解答数) | 30問(30問) | 25問(25問) | 4問(2問) | 2問(1問) |
出題範囲
プロジェクトマネージャ試験の出題範囲は「試験要綱・シラバス」を参照してください。ここでは試験要綱に基づいて説明します。午前1・2については下表のとおり範囲が定義されています。
午前1は応用情報技術者試験とまったく同じ範囲・同じレベルである。
午前2は開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム企画、法務、セキュリティから出題される。高度試験の中では比較的範囲が広い試験である。
午後1・2についても試験要綱・シラバスに定義されていますが、表現が冗長で少し長いので意訳しました。次のようなことを知っているか、どのように実施すべきかを出題範囲にしています。
- システム化構想・計画を策定し、計画に基づいてプロジェクトをマネジメントする計画を作成
- 要員や資源を確保
- スコープ、予算、スケジュール、品質、リスクを管理し、問題や課題を早期に把握し、適切に対応を実施
- ステークホルダーにプロジェクト状況を報告し、支援・協力を得る
- プロジェクトの計画と実績を分析・評価
合格基準
プロジェクトマネージャ試験の合格基準は下表のとおり試験要綱に記載されています。
時間区分 | 配点 | 基準点 |
---|---|---|
午前1 | 100点満点 | 60点 |
午前2 | 100点満点 | 60点 |
午後1 | 100点満点 | 60点 |
午後2 | ー | ランクA* |
*論文形式の試験であるため、回答はいくつかの観点でA〜Dにランク付けされます。合格できるのはランクAだけですので、それらの観点を満たす論文である必要があります。この観点やポイントについては午後2対策で説明します。
合格率の推移
プロジェクトマネージャ試験の合格率は概ね12〜15%で推移しています。これは他の高度試験(ITストラテジストやITサービスマネージャ等)と比べても大きな差はありません。ただし、直近3年間は合格率が若干上昇傾向ですので、今が狙い目かもしれませんね。
*合格率は「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 推移表」参照
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_07toukei/suii_hyo.pdf
対策の目安は50時間!
プロジェクトマネージャ(PM)試験に合格するには50時間程度の対策が必要です。これは一度でも応用情報技術者試験の対策をしたことがある人の目安時間です。応用情報技術者試験を受けたことがない方はさらに50〜100時間程度の対策が必要になるでしょう。
なぜ、50時間程度で済むのかというと、午前1・午前2が過去問からの流用率が非常に高いためです。そのため、過去問を徹底的に理解することで午後1・午後2の対策に勉強時間を集中できます。この点については、下の記事でも紹介していますので、詳細を知りたい方は参考にしてください。
試験対策
午前1対策
午前1は応用情報技術者試験とまったく同じ範囲・レベルで出題されます。そして、プロジェクトマネージャ試験の午前試験対策は「とにかく過去問を解きまくる」です。
なぜなら、午前1・2は過去問題を再利用して出題されるケースが非常に多いためです。諸説ありますが、再利用率が70%程度と言う人もいます。過去問で70-80点程度取れるようになったら本番でも大丈夫でしょう。
応用情報技術者試験の過去問を解きまくるなら「応用情報技術者試験ドットコム」が便利です。過去問からランダムに問題を出してくれます。どの年の試験から出題するかの範囲も指定できます。解答したら正答だけでなく、しっかりと解説まで確認できる神サイトです。
忙しいみなさんが試験対策に割り当てられる時間は限られています。その時間はぜひ午後1・2に割り当てたいところです。特に午前1は通勤時間やスキマ時間に「応用情報技術者試験ドットコム」でどんどん過去問にトライしましょう。
午前1はとにかく過去問を解きまくる。通勤時間を有効に活用しよう。
午前2対策
過去問を1回分解いてみる
まず、午前2の過去問を1回分解いてみましょう。本番は40分ですが、今は「時間」が問題なのではなく、「知っているか、知らないか」が問題なので、60分程度かかっても問題ありません。
午前2に限った話ではありませんが、過去問はIPAのWEBサイトで配布されています。とりあえず5年分くらいをまとめてダウンロードしておいてください。
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_04hanni_sukiru/_index_mondai.html
苦手分野を把握する
1回分の過去問が解けたら採点しましょう。点数が80点(20問正解)を超えるようなら、もう午前2対策は十分です。合格レベルだと言えるでしょう。40分以上かかっている場合は、その部分のみ改善するくらいです。知識レベルとしては十分です。
80点未満(正答が20問未満)の場合、「間違った問題」「迷ったけどマークシート形式だから偶然正解した」という問題をマークしてください。マークした問題が出題範囲のどの分野なのかを確認しましょう。
午前1と比較すると、午前2は問題の難易度が上がります。そのため、過去問の間違った原因を分析することを強くおすすめします。「知っていたけど、他の選択肢と迷った」「知らなかった」「イージーミス」のうち、「知っていたけど、他の選択肢と迷った」が一番の問題です。情報処理技術者試験の午前問題はよく出来ていて、 選択肢は2つまでは比較的簡単に絞れる仕組みになっていることが多いのです。 このような「あと一歩!」を取りこぼすことがないように、なぜ迷ったのか、なぜこの答えになるのかを十分に理解しましょう。
テキストでさらっと流し、苦手分野は重点的に。もう一度過去問。
あとは、テキストで出題範囲をさらっと流し読み、苦手分野は重点的に確認して、用語を覚えてしまいましょう。そのうえでもう一度、過去問を1回分解きます。この繰り返しを「80点以上になる」または「5年分実施する」くらいで十分でしょう。午前1の対策は5〜10時間程度で終えたいところです。
午前2は知識問題。
過去問 → 苦手分野の把握 → テキストで確認 → 過去問… の繰り返し。
午後1対策
午後1からがプロジェクトマネージャ試験の本番と言えます。ここまでは知識を問う問題でしたが、午後1からは問題文を正確に理解し、問われていることに本文の内容から正確に解答する必要があります。その意味で、午後1は国語の問題と言えます。
解答の流れ
まず、午後1の本番では以下のような流れになります。本番と同じ作業を対策の段階から積極的に取り入れておくことが重要です。
作業 | 詳細 |
---|---|
問題を選択する | 問1〜4の内容をななめ読みして、問題を選択する。 |
問われている内容を確認する | 設問の内容を確認し、ポイントには下線やマークをつけておく。 問われる内容を把握したうえで本文を読むため。 |
本文を分割 | 本文を5-10行程度のブロックに分割する。 |
ブロック毎に本文を読む | 本文を読み進める。ポイントには下線やマークをつけておく。 |
解答の原型を作る | 文字数の制限は気にせず、解答すべき内容の原型を作る。ここでは記述すべきキーワードをあげる。 |
文字数を合わせて解答を記入する | 解答の文字数制限に合わせて原型を削る。絶対に入れなければいけないキーワードを優先する。 |
全体を見直す | すべての設問に解答し終わったら、さらっと問題文を読み返して、解答に矛盾がないか、前提条件などで見落としがないか確認する。 |
下線・マークすべきポイント
プロジェクトマネージャ試験では、プロジェクトを計画、実行、評価し、要員やスケジュール等のリソースやリスクを管理する立場で解答する必要があります。以下のようなポイントに下線やマークをつけながら読み進めると、解答するときに立ち返りやすくなります。
・体制(顧客・自社・外部調達先 の組織、要員など)
・コスト(多くの場合、工数)
・時間(マイルストーン、クリティカルパス、カットオーバーなど)
・リスク(後で課題になりそうな点)、課題(すでに影響のある問題)
・コンプライアンス
・前提条件(なお〜、ここでは〜とする、といった表現)
・唐突な説明(例 プログラムの使用権のみ購入しており著作権はない)
特に「なお〜」「ここでは〜とする」「唐突な説明」には注意が必要です。記述形式の試験であるため、出題側としても正答を1つにする必要があり、本文に前提をつけることで2つ、3つある正答を1つに絞っているのです。つまり、「なお〜」「ここでは〜とする」という部分や唐突な説明部分は答えに直結する可能性が高いと言えます。
本番での流れが理解できたら、過去問だけでなく、解説つきの問題集を解く
午前1・2は「応用情報技術者試験ドットコム」やテキストに解説がありますし、そもそも知識問題なので解説は重要ではありません。午後1こそ解いた後の採点で解説を理解することで、対策が進むのですが、IPAの過去問には大した解説がありません。そのため、過去問だけではなく、午後1の問題集を用意されることをおすすめします。
問題集を入手したら、当日と同じ要領で時間制限をつきでひたすら問題を解いて、採点、解説理解を繰り返します。繰り返していると、いかに午後1が国語の問題かが理解できると思います。
午後1は国語の問題。
何を問われているかを正確に理解して、本文中から正答を見つけ出す。
問題文には正解のヒントが隠されている。ポイントを逃さずマーク!
午後2対策
実務未経験者、経験の浅い受験者向けの午後2対策
実務でプロジェクトマネージャ経験がない、あるいは経験が浅い方は午後2で不利になります。なぜなら、プロジェクトマネジメントやトラブルに関する幅広い経験がないと、出されたお題に沿ってどのようにプロジェクトを推進していくべきかを自分の経験や考えに基づいてたった120分で論述することなどできないからです。
未経験者や経験の浅い受験者が合格するためには「トラブルを疑似体験して、試験の準備をする」というコツがあります。その内容と対策についてはつぎの記事を参考にしてください。
論文にはこれを書こう!(合格基準を意識的に満たす)
午後2の対策方法の説明に入る前に、合格基準である「ランクA」について解説します。試験要綱には論文の評価方法について、以下のように説明されています。
設問で要求した項目の充足度、論述の具体性、内容の妥当性、論理の一貫性、見識に基づく主張、洞察力・行動力、独創性・先見性、表現力・文章作成能力などを評価の観点として、論述の内容を評価する。また問題冊子で示す”解答に当たっての指示”に従わない場合は、論述の内容に関わらず、その程度によって評価を下げることがある
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 試験要綱
「程度によって評価を下げることがある」とはどういうことでしょうか?
「問われていることに答えていない」と判断されたらランクCかランクDになります。逆に、問われていることに答えようとする内容であれば、ランクAかランクBになると言えます!
つぎに「評価の観点」について解説します。それぞれの評価観点に対して、あなたが論文中で記述すべき事項をまとめておきます。これらを満たして論述できれば、基本的にランクAになります。
IPAの評価観点 | あなたが論文中に書くべき事項 |
---|---|
設問で要求した項目の充足度 | 本文の後には例年設問ア〜ウがあり、それぞれ指定する文字数以内で答えることが求められます。 それら問われている内容に対して、結論先出しで書き始める。 |
論述の具体性 | 抽象的な表現ばかりが続かないように、具体的な数字(金額、期間、人数等)を入れる。 |
内容の妥当性 | 「私は〜することを計画した」と述べる場合に、その決断、選択が妥当なものか、セオリーに則っているかが問われる。プロジェクトマネージャ試験の対策を進めてきた方であれば問題ないでしょう。 気をつけるべき点として、採点者に「この人、プロマネじゃなくて、ただのシステムエンジニアだ」と思われてしまうと「妥当性」が疑われるため、「私はプロジェクトマネージャの立場で〜」や「私はプロジェクト管理者の立場で〜」と明示的に書くほうが良い。 |
論理の一貫性 | 論文の構成を考えた時点、書き終えた時点でそれぞれ論理破綻していないか確認する。 どうしても一貫性を保てない場合は、せめて「プロジェクトオーナーにより方針が変更された」と但し書き。 |
見識に基づく主張 | あえて知識やセオリーを説明する。「例 システム導入プロジェクトにおいて、リスクは開始時だけではなく、工程完了時等に定期的に見直すことが重要であるため、そのため私は〜」 |
洞察力 行動力 | 「考えた」「検討した」ばかりではなく、アクションをとってPDCAをとったことを説明する。 洞察力として、答えありきではなく、「他の選択肢も評価した」と書いて視野の広さを示す。 |
独創性 先見性 | 独創性や先見性がなくても私は合格できたので、ここでは評価しない。 余程古い話をしなければ問題ないと思われる。 |
表現力 文章作成力 | ビジネス文書レベルの話。結論先出し、そこに至った理由、根拠を書く。 |
本番の時間配分
午後2の難しさは120分で論文を完結させることにあります。私の場合、練習の段階から以下の時間配分を意識していました。
時間配分 | 作業 | 詳細 |
---|---|---|
5分 | 問題選択 | 問1〜3の内容をななめ読み。問題を選択する。 |
30分 | 論文設計 | 選択した問題文を読みながら、論文の構成や章立てを決める。 ここで評価のすべてが決まると言っても良いでしょう。 余白に書いて、論理展開に矛盾がないか確認する。 |
75分 | 本文記入 | 論文設計に沿って、どんどん書き進める。 |
10分 | 見直し | 全体を見直す。誤字脱字があれば修正。修正の結果、5マスに6文字書いても問題なかった。 |
午後2は論文事例を読んで、自分のものにする。
8つの評価観点を意識して書くこと!
おすすめテキスト・参考書
プロジェクトマネージャ試験の教科書的存在
このテキストは受験するに当たって、対策の中心に据えたい「教科書」的存在です。間違いなく最高の対策本であり、私自身もこれで合格したと言えます。
・試験の傾向分析
・学習方法
・解答テクニック
・試験範囲(午後主体)のテキスト
・過去問題とその解説
と広範囲をカバーしてくれています。さらに、過去問題の解説が充実しており、「なぜ」が解決できる仕組みになっています。
論文事例集を読むことで合格レベルを知る
このテキストの良い点は「合格論文って…実はたいしたことないんだ!!」が体感できるところです。
「プロジェクトマネージャは午後2の論文が苦手です…」という話をよく耳にします。こういう人に限って「スゴイ事例の論文じゃないと合格できない」と思い込んでいることがあります。
でも、実際はむしろその逆です。大したことを書かなくても合格できるんです。
午後2 はさまざまなパターンの課題(低品質、コスト超過、コミュニケーショントラブル、トラブルシューティング等)を特殊な前提の上で出題されます。 すべての出題文のシチュエーションを実務で経験した人など99%いません!少なくとも私は経験したことがないシチュエーションについて論述して合格しました。つまり、合格者の誰もが少なからず「架空の案件」を想像しながら論述する必要があるのです。
このテキストには30本の事例が載っていますので、あなたが「架空の案件」のシチュエーションを蓄積するのにうってつけです。まずはこのテキストで午後2に合格するレベルを知ることから始めましょう。
午後2 の組み立て方がわかる!
多くの人の悩む「どうしても午後2の論述の文字数が膨らませられない」という問題を解決してくれるテキストです。論文の部品を「モジュール」という部品単位に多数用意することでどんな問題が出題されても論述できるメソッドについて解説されたテキストです。
事前にモジュールを用意することで、従来の「午後2は当日の出たとこ勝負」から「コツコツ合格率を上げる」に変えることができます。
Amazonの評価が異常に低いのが気になりますが、中身を確認した上で間違いなく「買い」です。
なお、プロジェクトマネージャ試験か、PMP試験、どちらを受けるべきか迷っている人は両者を比較した記事も公開していますのでぜひ参考にしてください。
ツイッター(@nico|大学職員 ✕ ITエンジニア)ではブログの更新報告や関連ニュースをツイートしています。いいねやフォロー、ブログ記事へのコメントなどお気軽にいただけるとブログ更新の励みになりますので、ぜひお願いします。
コメント