IPA(情報処理推進機構)のプロジェクトマネージャ試験(PM試験)の午後2は論述形式の試験です。この論述試験は未経験者や経験の浅い受験者にとって非常に不利な形式です。
なぜなら、プロジェクトマネジメントやトラブルに関する幅広い経験がないと、出されたお題に沿ってどのようにプロジェクトを推進していくべきかを自分の経験や考えに基づいてたった120分で論述することなどできないからです。
未経験者や経験の浅い受験者が合格するためには「トラブルを疑似体験して、試験の準備をする」というコツがあります。この記事では、プロジェクトマネージャ(PM)試験に50時間の対策で合格したわたしの視点で、未経験者が午後2試験に合格するコツについて実際の問題文を見ながら解説します。
- 実務未経験でプロジェクトマネージャ(PM)試験の午後2に挑戦する方
- 経験不足が原因で過去に午後2を不合格になった方
- 午後2の対策に何をすれば良いか迷っている方
- 文系大卒業後、国内大手SIerに就職
- PMP&IPAプロジェクトマネージャ(PM)ホルダー
- MBAでマネジメントやHR領域を学ぶ
- 35歳をすぎてから大学の情報システム部門へ転職(競争倍率 約200倍)
- 情報システム部門の中途採用者の書類選考、面接を担当
プロジェクトマネージャ(PM)試験 午後2の出題パターン
午後2試験の出題にはたった1つの型があります。コツの前にこの型を解説します。午後2の出題は必ずと言っていいほど、つぎの形式で出題されます。
出題文
プロジェクトマネージャ(PM)試験の午後2は論述形式で、出題される2つの問題から1つを選択し、2,200字〜3,600字で論述する試験です。問題はプロジェクトマネジメントに関する「品質」や「スケジュール」「リスク」といった領域から出題されたり、「見積もり」「計画」「評価」といったフェーズから出題されたりします。
問題のお題目が先に示されます。上記の例だと「本番間近で発見された問題への対応」というのがお題目です。
つづいて、「こういうことってプロジェクトでよくあるよね?」と言わんばかりに「本稼働間近で発見された問題への対応」がどういうことを指すのか説明され、さらにそれへの教科書的な対応方法が示されます。
設問
ここからが設問(青字部分)です。
設問アで、「お題目にマッチしそうなあなたの案件の特徴を教えてよ」と問われるので、案件の特徴を記述します。案件の規模、金額、スケジュール、どういったシステムなのかを記述しましょう。さらに「本稼働間近に発見され、稼動までに解決できない問題とその判断理由」を聞かれています。つまり、どれくらいこの出題にマッチしているのかを説明すればOKです。
設問イが、主文になります。この課題に対してどのように考え、どのように対策したのかを記述しましょう。
設問ウは必ずと言っていいほど「その結果どうなって、それをあなたはどのように評価していますか?改善点はありますか?」と問われます。ここまでくればイージーですよね。「うまくいったが、細かいところでこういうところがうまくいかなかった」とか「うまくいったが、さらにここまでやっておけばもっと良い結果になったはず」ということを書きましょう。
経験しているかのように解答して問題ないのか?
問題ありません。設問にも書かれていますが、「あなたの経験と考えに基づいて論述せよ」ですので、実際に経験した内容以外のことであっても「考えに基づいて」論述すれば問題ありません。
プロジェクトマネージャ(PM)試験 午後2の評価観点
採点は4段階(A〜D)で評価され、A評価だけが合格となります。ではどのような観点で評価は下されるのでしょうか。試験要綱でつぎのとおり評価観点が説明されています。
設問で要求した項目の充足度、論述の具体性、内容の妥当性、論理の一貫性、見識に基づく主張、洞察力・行動力、独創性・先見性、表現力・文章作成能力などを評価の観点として、論述の内容を評価する。また問題冊子で示す”解答に当たっての指示”に従わない場合は、論述の内容に関わらず、その程度によって評価を下げることがある
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 試験要綱
まず、「解答に当たっての指示に従わない場合」=「問われていることに答えていない」と判断されたらどんなに素晴らしいことを書いてもランクCかランクDになります。逆に、問われていることに答えようとする内容であれば、ランクAかランクBになります。
そして評価の観点は「要求した項目の充足度」「論述の具体性」「内容の妥当性」「論理の一貫性」「見識に基づく主張」「洞察力・行動力」「独創性・先見性」「表現力・文章作成能力」です。かなり高い要求に見えますが、少なくともわたしの論述内容に「行動力」や「独創性・先見性」はありませんでしたが無事合格しました。
つまり、以下のような論述内容で実際に合格できているのです。少しハードルが下がりますよね。
合格できる論述の基準
問われたことに漏れなく解答しており、述べている内容が論理破綻いない。プロジェクトマネジメントに関する知識(=PMBOK)に基づいて、具体的で本当っぽく書けている。
でも、この「具体的で本当っぽい」っていうのが未経験者には難しいんだよ!
「具体的で本物っぽい」を高めるためにはコツがあるから続いて解説します
未経験者が「具体的に本当っぽく」書くコツ
論述で「具体的で本物っぽく」書くために押さえたいポイントは、「出題されるのはつねに”プロジェクトで起きるトラブル、あるいはその予防策”である」という点です。
重要なので、もう一度繰り返します。プロジェクトマネージャ(PM)試験の論述試験の多くは「プロジェクトで起きるトラブル、あるいはその予防策」を知っていれば答えられます。そのパターンを疑似体験しておけば、未経験者でも経験不足を理由に不合格になることはありません。
実際の問題を見てみましょう。つぎの表は直近3年分の午後2の問題をリストアップしました。どれも必ずトラブル、あるいはその予防策や対策に関する出題です。
試験年 | 問題タイトル | 問題文中に書かれたトラブル内容、あるいは予防内容 |
---|---|---|
2018年 問1 | 非機能要件の関係部署との連携 | (トラブル)非機能要件を連携しておかないと受入テストでトラブルになって、納期延期になることもある。 (予防)プロジェクトマネージャは各工程で関係者とその役割を定義する。 |
2018年 問2 | 本稼働間近に発見された問題への対応 | (出題内容自体がトラブル) |
2019年 問1 | コスト超過の防止 | (予防)コスト超過の兆候を察知したら、原因を分析してコスト超過を防止する対策を立案、実行する。 |
2019年 問2 | 助言や他プロジェクトの知見を活用した問題解決 | (トラブル)プロジェクト内の取り組みだけでは解決できない問題がある。その場合、特徴や背景の似ている案件を選定して情報収集し、分析・活用する。 |
2020年 問1 | 未経験の技術やサービスを利用するシステムの開発 | (予防)未経験の技術を利用する場合、事前に検証したうえでそれを計画に反映する必要がある。 |
2020年 問2 | リスクのマネジメント | (トラブル)ステークホルダーが原因のリスクは発見が遅れがち (予防)ステークホルダー分析して、リスク対策立案して、非常時計画を用意する。 |
つまり、未経験者や経験が浅い受験者はPMBOKなどの教科書的な知識を勉強と並行して、「プロジェクトにはどのようなトラブルがあるのか」について勉強することが合格への近道なのです。
ではトラブル案件を知り、その予防策や是正策の経験を補うためにはどうすればよいのでしょうか?わたしがおすすめしたい本はつぎのとおりです。
経験不足を補う対策本はたった2冊でOK!
① プロジェクトのトラブル要因を疑似体験
2012年に出版されてから少し時間が経っていますが、プロジェクトのトラブルに特化した内容でもっとも幅広くトラブルを取り扱っている書籍の一つです。
ひとつひとつのトラブルが具体的な事例で示されているわけではありませんが、とにかく取り扱うトラブルが幅広いのが特徴で、それぞれ是正策と予防策が示されています。ざっとリストアップすると以下のとおりです。
- コミュニケーション不全
- ステークホルダー関与不足
- チームワーク不全
- 外部依存マネジメント不良
- 意思決定遅延
- プロジェクト方針変更
- プロジェクトの目的不明確
- スケジュール不適合
- WBS欠陥
- ソリューション選定誤り
- 委託先選定誤り
- テクノロジー選定誤り
- 開発手法選定誤り
- 見積り誤り
- 工程定義不適合
- 非機能要件軽視
- 不適切契約
- 要件定義不良(この中でさらに、精度不足、現行機能保証欠落、移行検討不足等)
- 設計不良
- テスト工程不良
- 工程完了基準不良
- 定量的品質評価不良
- ガバナンス欠陥
- スコープマネジメント不良
- 課題管理不全
- リスク管理不全
- 変更管理不全
- スキル要因不足
- 教育軽視
- コンフリクト過剰
- ストレス過剰
- 離脱影響
もしも、あなたが未経験だったとしても、これだけのトラブル要因について学び、その是正と予防方法について学べば、午後2で問われるトラブルにマッチした案件をアタマの中で作り出して論述できる可能性が飛躍的に高まります。
② 論文を組み立てることに特化したロングセラー本
多くの人の悩む「どうしても午後2の論述の文字数が膨らませられない」という問題を解決してくれるのがこちらのテキストです。論文の部品を「モジュール」という部品単位に多数用意することでどんな問題が出題されても論述できるメソッドについて解説されたテキストです。
事前にモジュールを用意することで、従来の「午後2は当日の出たとこ勝負」から「コツコツ合格率を上げる」に変えることができます。
まとめ
いかがだったでしょうか?この記事では未経験者、あるいは経験の浅い受験者がプロジェクトマネージャ(PM)試験の午後2の論述試験に合格するための対策について解説しました。
実際の出題方法は毎年継続されている型があります。お題目に対して試験実施側の考えが述べられ、教科書的なトラブル対応方法・予防方法も述べられます。その後にあなたの考えが設問で問われる形式です。
もしも、あなたが未経験者、あるいは経験の浅い方なのであれば、必要な試験対策は「トラブルを知り、その是正や予防策を知ること」です。幅広いトラブルと是正策・予防策について説明されている以下の本がもっとも対策にマッチすることをご紹介しました。
プロジェクトマネージャ(PM)試験に50時間の対策で合格したときの対策記事を公開しています。対策全般について知りたい方はぜひ参考にしてください。
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