大組織でテレワークを費用ナシで導入した話

記事更新
Googleが2020年10月6日(火)に『G Suite』の名称を『Google Workspace』に変更したことにともない、本記事も該当箇所の名称を変更しました。

 テレワークを始めた企業のニュースを聞くたびに「東京の大企業だからできるんだろ」「IT系企業だからできるんだろ」と考えていませんか?実は、どんな組織でも少しの費用(あるいは無料)でテレワークを導入できるんです

 今回は、情報システム部門の立場で構成員1,000名超の組織にテレワークを導入したときの話をします。(1,000名ぽっちで大組織とかwwというご指摘は置いときます)

 なお、先にお断りしておくと、無料であるからには「業者によるサポートなしで、トラブルは自力解決」「クラウドはセキュリティが不安みたいな漠然不安はこの際度外視で」という点がいくつか出てきます。予めご了解ください。

目次

前提条件(私のケース)

「テレワークって、組織毎に事情が異なるので十把一絡げに正解があるわけではない」。実はこれが私の結論です。
明日にもリモートワークを始めたいと思っている読者に向かってこんなことを言うのは酷な話ですが、本当に正解はありません。組織の規模と社内風土、情報セキュリティリスクの許容度、構成員のITリテラシーによって正解が変わってくると思います。

 そのため、私がテレワークを導入した組織について、先にご紹介します。

  • 構成員は1,000名程度
  • ITリテラシーは決して高くなく、構成員の平均年齢は40歳超え…のはず
  • 新しいツールの導入には積極的な組織文化
  • 情報セキュリティに関する規程はゆるめ

テレワークの全体像を決める

テレワークを検討し始めると、「テレビ会議システムがぁ」「VPN接続がぁ」と、いきなり製品比較から入ってしまいがちです。まず自分の組織が「どのような形態のテレワークをいつまでに実現したいのか」を考える必要があります

 私たちが検討するときにポイントになったのは以下の点です。

構成員全員がテレワークして業務が回るのか?

まず、その前提をやめよう。サービス業なので窓口に誰もいないことはありえない。

組織の拠点からでなければアクセスできないシステムの利用はどうするか?

高価でかつ準備に時間がかかる 。普段使いのPCはそのまま置いて、自宅からリモートデスクトップ接続でOK。あるいは通勤組にデータ抜いてもらったらOKじゃん。

在宅用のPCはどうするか?本人所有のPCか、普段のPCを持ち帰らせるか、別途調達するか?

ウイルス対策ソフトが入った空のPCを貸与する。機密データが入った状態のPCを持ち運ぶことがないようにしよう。

 このように大まかなでいいので方針を決めないと、数多あるテレワークのパンフレットの海をさまよい泳ぐことになります…。本当に方針って大切。これをシステム部門に丸投げしちゃダメです。

情報セキュリティリスクを想定しておく

 方針が決まれば、組織が「どの程度まで情報セキュリティリスクを許容できるか」についても議論しましょう。議論すべき事項は次のような点です。ここまで割り切った

・在宅勤務用PCを自宅以外で使われないか
 → 打ち手の例:在宅就労規程に盛り込む
・在宅勤務用PCの紛失
 → 打ち手の例:PCにデータを保存しないルールにする
・在宅勤務用PCがウイルス感染してデータ漏えいする
 → 打ち手の例:ウイルス対策ソフト導入。そもそもローカルにデータない
  怖いのはクラウドへの不正ログインなので2段階認証を必須化。
・リモートワークで使用するクラウドサービスのデータが流出する
 → 打ち手の例:んな事考えてたら業務にならんのでリスクを受け入れる
・でも漏えいしたら存続の危機に関わるようなデータはどうする…
 → 打ち手の例:在宅勤務用PCでは取り扱わないデータを予め決める

組織内の就労規程を準備する

 既存の就業規則ではテレワークに対応できないケースがあります。世の中にあるサンプルをベースにサクッと作成します。参考にした資料を列挙しておきます。

厚生労働省『テレワーク就労規則〜作成の手引き〜』
https://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf
上記をベースにしたサンプル規程(Microsoft Word 版)
https://roumu.com/archives/100622.html

 定める上で議論したポイントは「在宅で就業する際の注意点」「勤務時間・休憩時間」「連絡手段・連絡体制」「報告の義務」「費用負担」「在宅就労時の災害や安全に関する事項」くらいでしょうか。最後に、既存の就業規則との整合性を確認して終わりです。

テレワークのためのツールを選定する

テレワークで必要になるツールを以下のとおり定義しました。

  • 文字チャット
  • ビデオ会議システム
  • 音声通話
  • ファイル共有
  • 拠点からのみアクセス可能なシステムへのアクセス手段

文字チャット(コミュニケーションツール)

 私たちの場合はSlack(有償版)が導入済みだったため、チャットツールについては議論の余地はありませんでした。一般的には、①Slack、②Chatwork、③LINE forビジネス、Google Hangout等々、いくらでもあります。ちなみに、Slackには無償版もあります。一部の機能制限はありますが、30〜40名程度の組織であれば、無償版でも十分運用可能です。(実際、有償版にするまでは無償版で1年以上運用していました)

 Slackの簡単な使い方は動画がたくさんありますので、ググってみてください。

公式動画は英語ですが、簡単な内容ですので、なんとなくわかると思います。個人的にはSlackが一番オススメ。その理由は「ユーザーインターフェイス(画面の配置や構図)のおかげで直感的に使えるため」です。これによって、本当にエンドユーザーからの問い合わせが少ないサービスになっています。

ビデオ会議システム

 ビデオ会議システムは、無料・有料で多くのサービスがあります。無料の中で断然おすすめなのは『Zoom』です。使い勝手が良くて、ビデオ・音声とも高品質なのがポイントです。次点で『Google Meet』でしょうか。

 ビデオ会議システムを使う場合、在宅勤務側も会社側もヘッドセット(オペレーターがつけているようなマイク付きヘッドフォン)が必要です。

 さらに、会社側の参加者が複数人の場合は『外付けスピーカーフォン(マイク付きスピーカー)』を使うことで、聞き取りにくい、声が届かないという問題が解消できます。

音声通話

 音声通話の選択肢は、①携帯電話を貸与、②IPフォン、③Slack等のチャットツールの通話機能、くらいでしょうか?若干反則ですが、LINE通話って方法もありますね。でも実際にテレワークを始めると、ほとんど音声通話が必要ないことに気づくはずです。なので、ここでも説明は省略します。

ファイル共有

ファイル共有の方法も多数あります。①Google Workspace(Google Drive)、②Dropbox、③Box、④メールやSlackに添付してやりとり等。ここで必ず議論になるのが「そのクラウド信用できるの?データ漏えいとか盗まれたりしない?」という話です。これについては、導入済み企業を確認したり、「絶対にこの手のデータは載せない」といったルールで回避しましょう。

 私たちは従来からGmail、Google Workspaceを使っていたためGoogle Driveで共有ドライブを作成し、ファイルを共有しました。

拠点からのみアクセス可能なシステムへのアクセス手段

 基幹システムなどの重要なシステムは外部からアクセスできないようにIPアドレスでアクセス制限をしている場合がほとんどです。そのため、在宅勤務用PCからはアクセスできません。

 なにも自宅からすべてのシステムにアクセスさせる必要はない(逆にアクセスできると情報セキュリティ投資がどんどん高くなる)、というのが私の結論なのですが、それを言ってしまっては身も蓋もないので、一応接続する場合は以下の方法をとりました。

 それはGoogle Chrome リモートデスクトップ 機能(もちろん無料)です。リモートされる側(職場)、リモートする側(自宅)にそれぞれGoogle Chromeブラウザをインストールして、それぞれGoogle アカウントでログインしている必要があります。詳しい流れは Youtube に良さげな動画がありましたので、リンクを載せておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=LbM1icWcpUs

テスト導入を経て、本格導入へ

規程やツールの準備が整ったら、本番までに関係者だけでテスト導入することを強くおすすめします。というのも、テレワークってやってみるとあれこれ考慮不足が出てきます。

 私が遭遇したのは以下のようなケースです。それぞれテスト導入期間中にマニュアルを作成したり、運用ルールに追記することで本番での混乱を最小限にとどめました。

リモートされる側(会社)PCが一定時間操作されないとスリープモードになってしまい、リモートアクセスできなかった…。(初歩的な問題)

たまたま、在宅者が宅配便の受け取り対応をしていたときにビデオ通話しても応答がなくて、そのまま着信に気づかず1時間経過…「在宅でワークしていないんじゃないか疑惑w」

操作に関する問い合わせがすべてシステム部門に来て捌き切れない…。
(初めて使うツールもあるし、各部署毎でどのような使い方をしているかまで把握していない)

最後に

 いかがだったでしょうか?テレワークに十分な予算と準備時間を確保できれば、しっかりとしたものを構築できます。一方、低予算・即実行でもそれなりのテレワークが可能であると知ってもらうことで、必要なすべての組織でテレワークが推進されることを願っています。

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